月見草をご存じでしょうか。
無粋にも知らないから即調べるをやらかし、オチを予感してしまったわけですが。ご存じない方はあえて調べず、読み進めることをお勧めします。
本作のキー、は上に述べたように月見草です。
主人公の雪絵さんは祖母の家を訪ねるため、夏休みには田舎町で過ごしていました。このレビューをお読みの方々にも、そういう方はいらっしゃるでしょう。
雪絵さんはその行ったり来たりを、中学1年生までやっていた。そしてそこで勇助くんと出会いーー十年前の、最後の年。雪絵さんは勇助くんに呼び出されて、月見草の咲く丘で待っていた。けれども勇助くんは姿を現さず、それきりに。
いったいどうしたのだろうか。事故でもあったのか、勇気が出させず行けなかったのか。
いろいろとモヤモヤしながら読者は不安になります。しかも、回想の前後で種明かしをしてくれないのだ、なおのことです。
「初恋」タグやその当時の雪絵さんが小学生だったことを鑑みると、初恋だったのでは無いかと考えられます。
その初恋の終わりが、振られるでもなく、何も言えず別れるでもなく、呼び出されたのに来なかったという中途半端な思い出に。のどに魚の骨が引っかかったような、そんなすっきりしない思い出を持ちながらも成長したのだろう雪絵さん。このモヤっとする思い出に対しどう感じ、どう折り合いを付けるのか。未読の方は直接ご確認ください。読了後は爽やかな気持ちになれる、ということだけ先に伝えておきます。
お勧めです。
月見草についてご存じでない方はそのままで、ご存じの方は記憶を抹消して、読んでみてください。