シーン19

◯ バスの待合小屋・外観(夜)

   山や田んぼばかりの田舎道にポツンと建っている。

   小屋の中を照らす薄暗い電気。

   窓越しに登と硝子の姿が見える。


◯ 同・中(夜)

   ベンチに座った登と硝子。

   硝子、登を不安げに見つめる。

   登、ガタガタと貧乏ゆすりを繰り返しぶつぶつと呟く。


登「金もない。時間もない…」

硝子「……」

登「本当なら一泊二日の予定だったのに…。こうなったら裏口から忍び込む?無理だろうな…。コンビニ強盗?いやバカか…」

硝子「だ、大丈夫だよ!登なら絶対辿り着ける!わたし信じてるから!」

登「……」

硝子「…諦めるの?」

登「諦めないよ!」

硝子「……」

登「あ、ごめん…」


   悲しげに俯く硝子。


硝子「ううん。謝るのはわたしの方…。わたしがこんな体じゃなかったら…」

登、大きく首を横に振って、

登「硝子ちゃんは悪くないよ!」

硝子「登…」

登「悪いのは!えっと色々だよ!でも硝子ちゃんが謝るのは違う!絶対に!」

硝子「…ありがとう」


   柔和な笑みを浮かべる硝子。

   登、気恥ずかしくなって目を逸らす。

   ベンチの上の二人の手、いつの間にか重なりあっている。

   目を泳がせる登とふしめがちな硝子。


硝子「…ねェ登、キスしようか」

登「…………………………………………え?」

硝子「登がもっと頑張れるように」


   硬直する登。


登「えええええッ!?いやいや。えええええ え!?いや…。ええええええええッ!?」

硝子「……」

登「…いいの?」


   恥ずかしそうに頷く硝子。

   ドクドクと早鐘を打つ登の心臓。

   スッと目を瞑った硝子を見て、登は生唾を飲み込む。

   登、硝子の桃色の唇にゆっくりと顔を近づけて行く。

   二人の唇が触れる寸前、


登「ゲホッ!ゲホッ!ゲホッ!」


   強烈な臭気に激しく咽せる。

   口と鼻を抑えて地面に崩れ落ちる。


登「(咽せながら)硝子ちゃッ…ごめッ…」

硝子「登?」


   硝子を見上げる登。じっと目を凝らす。

   小首を傾げる硝子の口元に蠢く影。


登「…なんで?」

硝子「うん?」

登「…潰したはず、なのに」


   硝子の口から出て来たのはハエ。

   唇の端でカサカサと前脚を擦り合わせる。

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