とにかく、美しい物語です。
存在感の薄い、けれども声の綺麗な同級生が気になる主人公はある日、動画投稿サイトで耳の離せなくなるほどの美声で朗読や雑談をするチャンネルを見つけてしまう。
出だしから、読者もこのチャンネルの主と声の綺麗な同級生の関係を疑うわけなのですが、外見的特徴ではなく「声」に関する記述を軸に物語が紡がれます。
一人称視点なのですが、主人公の少年は夢中になりながらもどこか物静かで、静かな雰囲気を阻害しない。「海」に関する詩や小説のタイトルがいい感じに雰囲気を作っていて、地の文は静かな波音、台詞の部分は一気に音が大きくなって、綺麗な声が聞こえてくる……そんな錯覚をもたらします。女の子のほうはとにかく美声なわけですから、ASMRにしても良いかも。
最後、主人公が朗読を希望した小説のタイトル(登場するタイトルはどれも実在)がなかなか洒落が聞いていて、最後まで海の静寂を感じさせてくれました。
おすすめです。