本作は小さな頃から海に呼ばれ続け、海から逃げ延びようとした男の独白ものであり、その男を見ているもうひとりの男がみたものを語る物語です。
海から逃げる男は語ります。
小さな頃から海が呼ぶ声を聞いたのだと。はじめは微かに。その声は成長とともにだんだん、だんだん近づいてきて、怖くなって逃げ出した。
その先にたどり着いたのが、「物語」の開始地点である、海のない中央アジアの奥地です。
けれども忘れてはいけません。
地球に、海ではなかった場所はないのです。
海に呼ばれ、海から逃げ続ける男はこれまでどんな恐ろしい思いをしてきたのか。
その話を聞くもうひとりの男は、何を見たのか。
本作は二段階の視点で、得体のしれないものが海の底から忍び寄り、文字を通して読者を引きずり込みます。
ホラーといえば夏。そして今は夏。
お勧めです。ぜひ、この恐怖を体感してみてください。
始終、どろっとした恐怖が襲いかかってくるホラー小説でした。とても面白かったです。
アジア大陸の奥深く、アフガニスタンの大山脈すら遠く越えた中央アジアの乾燥地帯。塩化カリウムを掘り出して生活する村に、二人の日本人がいた。
主人公の「俺」はもう一人の日本人である男から、彼の人生を聞く。
それは、控えめにいっても恐ろしいもので、迫り来る海から逃げるものだったのだが——といったお話です。
日本に住んでいる我々ですから、本作は非常に恐ろしく感じると思います。島国である日本と海は切っても切り離されない関係で、男の話を聞いている最中、背筋が凍ると思います。
さあ、本作に登場する二人は日本から遠く離れた場所にいます。しかも、それは乾燥した地帯。安全圏で、安全に話す男の恐ろしい話を、存分に聞いていただきたいです。
きっと、恐ろしさで身が震えると思います。ホラー好きな人、思わず背筋が凍ってしまうような作品が、こちらにありますよ!
ぜひ、ぜひご一読ください!
中央亜細亜の内陸部、海岸線からは優に
千二百キロも離れた砂漠の地に
塩を採掘して生計を立てる男が二人。
一人の男が、幼少期の 海 の記憶を
語り出す。
澱んだ海の不快な黯い彼方から聞こえる
恐ろしく巨大な何かの呼び声が、いつしか
自分を呼んでいると気が付いた。
余りの恐ろしさ忌まわしさに海辺を離れ
海のない場所へと住まいを移したものの
川を辿って 海 は自分を呼ぶ。
あの声は、海の深い所から響いて来る。
海に囲まれた島国では駄目だと大陸に渡り
住まいを転々としながら 呼び声 に
抗ってはみたものの、それは川や湖の水を
頼りに次第に近づいて来る。
遂に、見渡す限りの砂漠へと。
話し終えると、その男は疲れた様に椅子に
凭れ掛かるのだが。
海に棲む何者かに付き纏われる。
それは一体何を意味するのだろうか。
そして、逃げ切れるのだろうか。