★
0
概要
言われていないことは、書きません
城塞都市ラウテンブルクでは、十人のうち二人しか字が読めない。
だから門前広場の西の隅、樫の机ひとつが、この街でいちばん忙しい場所になる。代書屋テレーゼ・ヴァイラント、三十一歳。願い書、借用の証文、詫び状、遺言、そして手紙。
仕事には、先代から口伝えで受け継いだ掟が三つある。
一つ、言われていないことは、書かない。
二つ、書いたものは読み上げる。本人が「たしかに、聞きました」と言うまで、渡さない。
三つ、宛先の書けない手紙は留め置く。留めた手紙は、代書屋の手からは出さない。
門衛のグンターは「帰ってこいと書いてくれ」と言った。そのとおりに書けば、それは命令書になって娘には届かない。だからテレーゼは訊く。薪を何束割ったか。去年は何束か。何人の家か。
――そうして、一度も
だから門前広場の西の隅、樫の机ひとつが、この街でいちばん忙しい場所になる。代書屋テレーゼ・ヴァイラント、三十一歳。願い書、借用の証文、詫び状、遺言、そして手紙。
仕事には、先代から口伝えで受け継いだ掟が三つある。
一つ、言われていないことは、書かない。
二つ、書いたものは読み上げる。本人が「たしかに、聞きました」と言うまで、渡さない。
三つ、宛先の書けない手紙は留め置く。留めた手紙は、代書屋の手からは出さない。
門衛のグンターは「帰ってこいと書いてくれ」と言った。そのとおりに書けば、それは命令書になって娘には届かない。だからテレーゼは訊く。薪を何束割ったか。去年は何束か。何人の家か。
――そうして、一度も
おすすめレビュー
書かれたレビューはまだありません
この小説の魅力を、あなたの言葉で伝えてみませんか?