世界を一枚の紙に描いた男

@fanj

プロローグ

世界には、名前を残した探検家が数多くいる。


海を越えた者。


山を登った者。


新大陸を見つけた者。


しかし――。


世界そのものを、自分の足だけで描こうとした人間はいただろうか。


時は紀元前23年。


現在のアルゼンチン・ブエノスアイレス周辺に、一人の少年が生まれた。


彼は少し変わった体を持っていた。


そして、誰にも理解されない夢を持っていた。


「世界を、一枚の紙に描きたい。」


16歳。


故郷を追われた彼は、紙と筆だけを持って歩き始める。


南アメリカ。


北アメリカ。


ユーラシア。


日本列島。


オーストラリア。


アフリカ。


南極。


55年間、誰よりも長く、誰よりも遠く歩き続けた。


そして80歳。


彼は、人類史上初めて、一枚につながる世界地図を完成させる。


その後、105歳で静かに人生を終えた彼の家は、約1900年もの間、パラオの森で眠り続ける。


やがて20世紀。


その家は偶然発見され、世界は震撼する。


そこに残されていた地図は、現代の地図と比べてもほとんど誤差がなかった。


それは、地図ではない。


一人の男が歩いた人生、そのものだった。


これは、後に「世界版伊能忠敬」と呼ばれることになる、一人の旅人の物語である。

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