雨上がりの古書店で、高校生の愛美くんが近所のお兄さん・東雲さんとだらだら喋っている。一話でやっていることはほとんどそれだけなんですが、この居心地がすごくいいんです。
まず東雲さんが最高です。博識で静かで絵になる人……のはずなのに、自分の出した絵本を「小説家の犬と脚本家の猫の対立を描いた話」「後半四十ページの銃撃戦が感動もの」と胸を張って紹介してくる。「藪からスティック棒に」なんて言い出す。憧れの人のはずなのに残念さがどんどん漏れてきて、愛美くんの心の中のツッコミと一緒に笑ってしまいました。
そのうえで、いちばん好きなのがここです。自分でも名前のつけられない感情を抱えた愛美くんが、中身を伏せたまま東雲さんに相談する。返ってきたのが「草津の湯でも治せぬ病」。……本人はさっぱり分かっていません。読んでいるこちらだけが「それ、もう答えを言われてるよ」と気づけてしまう。この温度差がたまりませんでした。
まだ一話なので、今からいくらでも追いつけます。夏の匂いのする、静かで可笑しい話が読みたい方はぜひ。
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