星の子は砂になる

聖心さくら

第1話

「ここでいいじゃん、ベンチあるし」


 コンビニから数分歩いて、俺んちのそばの公園。


 住宅街の中、砂の広場、ジャングルジムにブランコ、公衆トイレに水飲み場、その近くにベンチが。


「うん、いいよ」


 ジャリジャリと踏み鳴らして、二人でベンチへ。


「はぁ、なんかさ、飲んでも寒くね、年かこれ」

「なわけ」

「俺が、本ばっか読んでるからかな、大学生ってさ、登山とかスキーするじゃん、まじで運動しないな」

「なにそれ、嫉妬してんの、ウケる」

「おい、あぶないな」


 なんだコイツ、肩でぶつかってきた。


「ごめーん、酔っちゃったから」

「嘘つけ、酒強いくせに」

「うるさっ、ねぇ、早く座ろ」

「おう」


 あれこれしてたら、もうそろ夜があける。

 公園の時計は五時を指す。


 マンションに囲まれた小さな公園。


 三月のベンチ。月光。


 なんか楽しそうな雰囲気、の俺と彼女で二人きり。


「うちら、何買ったけ」

「あほ、ビールとあとは、なんだっけ」

「あんたも覚えてないやん、ばかあ」


 なにか、ぶつぶつと彼女が言う。

 ビニールから酒とつまみをベンチにだす。

 金ぴかのビール、プッシュと開ける。


「ちょっ、あんた、私のビール取るなや、しね」

「は、おまえ、レモンサー買ったやろ」

「わたし、いま飲みたいもの飲むから、あんたは黙ってちょーだい、あっ、ほらー、飲ませてやる」

「おいまて、ふざけんなよ、ははは」


 ビールを顔に、ぐいぐいと押し付けてきて。


「ほらほらほら、泡出てるよ、飲んで飲んで」

「んっ、お、んん」


 ビール振って、こいつ勝手に缶を開けて、ふざけてる。ムカつくから、俺は地面に置いたビニールから、レモンサーを出して、開けてやった。仕返しだ。


「あんた、んっ、ばか」

「おまえがバカ、はは、おら、なに垂らしてんだよ」

「ほん、最悪なんだけど、濡れたし、ころす」

「はははは」

「おまえ、笑うなや、は」

「はははははっ」

「はー、ははっ、はぁ」


 腹が痛い。もう痛すぎ。


 のけぞったら、何か落とした音がした。


 サワーは握られてる。


 きっとビールが落ちたんだ。


「あんたの、こぼれてる」

「おまえが落としたろ、もったな」

「なに、あんたが飲むんでしょ、ほら隠し味に砂とか」

「えっ、俺、マジで飲むよ」

「は、ひくわ、ひくひく、きも」

「言ったのだーれだ」

「わたしだああああ」

「はい論破、おまえの負け、罰にサワーもらう」

「ふざけん、おい、飲むな、ばかあ」


 ぐびぐびっと、俺は持ってるレモンサーを飲む。


 パキッと両目を開けていたら、そうなんだ。


 今日は、夜空がとても綺麗だ。


「うぎー、ぎー、ぎいぎい」


 ずしっと重たい。


 小動物みたいな声を出して、俺に体を任せてる。


 負けてたまるか。俺は上を向いたまま、夜空を飲み干すように酒を呑む。でも無理で。


 だらだらと口から零れる。


 こんな美しい夜空を飲み干せるわけがない。


 きらきらな星が輝いて、俺を見てるな。


 きれいだ。ああ。


「きゃっ、おい、まじで殺すぞ、はははは、はっ」


 そういえば、零してた。


「感じてくださーい、ナイアガラの滝でーすわ」

「っは、はは、ばか、おまえ、はははは」


 口の中はからっぽなのに、首には汗が流れる心地。

 首筋に沿って流れる発泡性の血液。

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