ギーズ卿のクズっぷりをウォルティーが暴露するぜ、みんな覚悟しろ

~~~~~~~~

★ギーズ家とセントレ家の裏に何があるのか。このストーリーでは表向きの断罪劇はありませんが、裏では……。

★ランベールの用心棒ウォルティーがコッソリ白状します。

~~~~~~~~



 俺の名はウォルト・フォルト、通称ウォルティー。


 北部地方の鍛冶屋の次男だったが、若いころヤンチャし過ぎて勘当され、首都で『ラフィアン・ローズ』という盗賊団に入り、日夜警官と命がけの鬼ごっこをしていた。


 俺の黒歴史だ。


 あるときラフィアン・ローズが、まとまった金欲しさにセントレ銀行襲撃を計画した。ところがだ、鍛冶屋上がりで怪力の俺が裏口をけ破ったところを銀行頭取に捕まった。

 その頭取はボクサーみたいな奴で、俺よりもずっと強かった。これは叶わないと一発で分かった。


 それが頭取と俺との運命の出会いだった。


 そのとき頭取に、『罪を見逃す代わりに俺様の用心棒になれ、さもなくば断崖から落ちて死ね!』と脅され、以来頭取の『影』をやらされている。


 頭取にはキラキラした愛娘、エレンお嬢様がいる。男心をそそるなまめかしい容姿をしているため、成人前から言い寄る奴らが絶えなかった。歌姫だった母親に似たんだろうな。

 そこで頭取から、『エレンに近寄る男を片っ端から調べろ、不適当だと判断したら消せ!』という命令を受け、お嬢様の番犬としてあっちの男こっちの男を始末していたところ、思わぬ事態に巻き込まれた。


 ランベール・ギーズという外国出身のヘラヘラお貴族様に、お嬢様が目を付けられたのだ。


 俺はソイツとお嬢様との接触をことごとく破壊した。にも関わらずソイツは俺を出し抜きやがり、あろうことか、媚薬を盛ってお嬢様との既成事実を作っちまったのだ!


(何ってこった! 俺の死亡フラグが……)


 それが頭取にバレたとたん、俺はチンピラの襲撃を受け、あちこちの骨をやられて一か月ほど起き上がれなかった。後で知ったことだが、そのチンピラは俺が所属していたラフィアン・ローズだったんだ。


 ところがだ、媚薬を盛られたのはどうやらギーズの方だったらしい。しかも、ソイツがお嬢様に纏(まと)わりついていたわけではなく、お嬢様の方が……。


(……お嬢、怖え……)


 数か月後、冷静になった頭取に脅されてお嬢様とスピード結婚しやがったギーズは、セントレ銀行から融資を受けてある事業を立ち上げた。


【気に食わない奴はスキャンダルで(社会的に)潰す! おかしな(自分に不都合な)スキャンダルは潰す!】


 というご立派コンセプトの週刊誌、『セカオピ』を発行する出版社だった。そこに載せる記事は、ソイツが興味を持ったかどうかで決まる。


(趣味かよ!)


 しかも、裁判沙汰になるとセントレを頼ってくる。ホント、何者だよアイツ。あっ、一応お貴族様だった。

 何で貴族が出版社やってんだよ。『ギーズ砲』とか呼ばれていい気になってやがる。

 

 ギーズ卿というヤツは、仕事を通して見ればデキるヤツかもしれない。しかしその本質はエレンお嬢様など気にも留めていないクズだ。

 結婚前から未亡人専門らしく、あっちの未亡人こっちの未亡人を食い散らかしていた。未婚の令嬢や夫のいる女性と違い、あと腐れがないというのもあるんだろう。

『サロンパーティーに出席する』と言っては某伯爵未亡人のお屋敷へ行き、『新製品紹介パーティーへ行く』と言っては亡き某商会頭の未亡人のお屋敷へ行き。


 それが理由なのか、エレンお嬢様にはまだお子様ができる兆候がない。

 このままだと、近い将来ギーズは頭取に始末されるだろう。可憐なお嬢様を取り戻せるなら俺的にはどうでもいい。葬式くらいは出てやる。


 お嬢様が結婚してからは、ヤツの用心棒として屋敷に潜りこまされた。名目はギーズの用心棒。頭取に命令された役割は監視。


 そんな『クズ中のクズ』が、突然どこの馬の骨かも分からない、不気味な目をした娘に執着しはじめた。まだ奥様との間に子供がいないからなのか、気持ち悪い趣味があるのか、そこんところは不明だ。

 もちろんセントレ氏には報告済みだ。


『死ね、ギーズ!』と、頭取は叫んだ。


 しかしそれを機に、ギーズのよろしくない生活態度が劇的に改まったのだ。娘の前では穏やかな紳士を気取るから、笑っちまうじゃないか。


(お前さぁ~、どこが紳士かよ!)


 案の定その娘に関する仕事が来た。

『アイラ・サウスの身辺』『サウス男爵家の系図・経歴』『サウス男爵家馬車事故の原因』調査だ。


 事故の原因は道路のぬかるみと脱輪。よくある事故だ。

 詳しく調べるに従って、亡き当主の弟、娘の叔父――に関する黒い噂が出てきた。しかし、その叔父が事故を引き起こしたという証拠は見つからなかった。





 現在俺は、ギーズ出版社の隣『セントレ商会』のデスクで書類とにらめっこしている。今日ヤツから指示された新たな仕事は二つ。


・ウエスト家タウンハウス使用人の左遷先、新しい使用人にセントレの影からひとり送ること

・サウス家の遺産相続に関する調査


 これらを可及的速やかに実行しなければならない。そういえば、サウス家の馬車を破壊しろとも言われてたっけ。


『セントレ商会』とは、エレンお嬢様の実家セントレ家の法人のひとつで、表向きの業務は人材斡旋業・警備保安業・結婚斡旋業などなど。最近では中古馬車売買にも手を出しはじめた。

 別名『CSI――セントレ・サービス・オブ・インヴェスティゲーション』といい、セントレ家の影が動きやすいような裏業務も請け負っている。


 ギーズが出版社にいる間、俺はヤツから指示された、面倒でうっとうしい業務をそこでこなしている。


(はぁ~。最近はあの娘関連ばかりだ。どういう訳で奴はあんな小娘に執着しているんだ? 可愛いといえば可愛いかもしれないけどな。ちっとも笑わないんだよな。境遇が境遇だから仕方ないかもしれないけど、世の中にはもっと悲惨なストリートチルドレンがゴマンといるわけだがな……)


 セントレ商会は、今でこそエレン奥様の父親であるヨーク・セントレ氏が代表者になっているが、次期代表者はヤツらしい。

 セントレ家は貴族ではなく代々商人の家系で、血筋にはあまりこだわりがない。だが将来ヤツとエレンお嬢様のお子様が継げば、セントレは子爵の血を継承した貴族になる。

 ギーズは後継者指名を断っているが、セントレ氏がヤツを評価しているのは確かなのだ。


 ヤツが後継者になったら、俺はどうなるんだ?





「ちょっと付き合ってもらえるかな」

「はい、ギーズ卿」


 時間が空くと、ヤツはセントレ商会の体育館で剣の練習をはじめる。そのたびに俺は相手をさせられている。意外なことに、ヤツはフェンシングが得意なのだ。表面上穏やかな紳士ぶっているのに、とき折内面に潜む攻撃性が表に出るのを抑えられていない。


 実に厄介だ。

 ヨーク・セントレ氏とは同族嫌悪なのかもしれないな。


 エレンお嬢様、さっさとギーズと離婚して、俺と再婚して下さい。



~~~~~~~~

☞ランベールとエレンは政略婚ではなく、上昇志向が強いエレンの陰謀婚です。セントレパパはそれに乗りました。孫が生まれれば貴族の家系になるわけです。エレンの持参金はすごかったと思います。

☞次回でアホクズ契約(愛人契約?)が終わり、クズ伯爵がほんのり登場します。

~~~~~~~~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る