疑惑の悪役令嬢来襲! 令嬢モドキは令嬢になれない

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★ウエスト邸の離れで過ごすアイラに敵(明らかに同郷)が。アイラ(北橘佳奈)のクズ力解放の瞬間がやって来たのです。

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 ウエスト邸に滞在して四か月ほど。寒さも緩んで低木に花が咲きはじめた。これまでのところ不都合は生じていない――使用人の目が冷たくよそよそしい以外は。


 得体の知れない男爵令嬢が居座ってるんだもの、使用人としては扱いにくいよね。


 最近、初めての長編小説『追放令嬢、その場をやり過ごせ!』を執筆中です。天気の良い日には高飛車メイドと契約の散歩(何の意味があるの?)をしつつ、『こんな感じなら楽勝じゃね?』と、呑気に構えていた矢先、事件は起きたのだった。


 不機嫌な来客があったのだ。


 わたしはガーデンテーブルで、ランベール様から頂いたお気に入り花柄ワンピース姿で優雅にコーヒータイムをしていた。そこにやって来たのは、ウエスト邸の使用人をゾロゾロ引き連れた、イラつくほどぶりっ子ファッションな女。


「あなた、誰!?」と、いきなり女が叫んだ。


(うわっ、開口一番がソレ? ドン引き!)


 長い金髪を成層圏までアップにし、絢爛豪華なクジャク(?)みたいな羽根飾りをし、ギッチギチにコルセットを締めた細いウエストを強調した、どこかの絵で見たようなフリル過多ファッション。


 ゲェ~、ベルばらかよ。ベルばらオタクかよ。


 五重の塔ピンクグラデーション生地多過ぎドレスに、タレマシマシの焼きまんじゅうを串ごと撃ち込んでやりてぇ~!


 おっと、地がでましたわ、淑女にあるまじき言葉遣いでしたわ……。


「わたくしはエリーゼ・イースト。侯爵家の令嬢よ、ジェシー様の婚約者。あなたがウエスト邸の客人って、どういうこと?」


 ジェシー・ウエストって婚約者がいたの?

 わたしがお連れ様になる意味ある?


「初めまして、サウス家の、アイラ、です」

「客人とか言ってるけど、離れにいるなんて単なる愛人じゃない。厚かましい! あの方が愛人を持つなんて思わなかったわ!」


(違いますけど?)


「ここはわたくしが、好んで、使っているだけ。愛人では、ないのです」

「まともに話せないの? 頭がオカシイの? バカなの? 調べはついているのよ、客人なんて大嘘!」


 もしかしたら婚約者というよりは伯爵様のストーカーかも。だって婚約者がいるのなら、どうしてわたしがお連れ様の真似をしてるわけ?

 この人はウエスト邸公認みたいだけど? 変なの。


 クズ男に対してクズ女。お似合いじゃない。わたしの出る幕ないよね。


 だがしかし、不本意だけど契約は守らなければならない。それに、こんな奇妙な女に負けるのは嫌だ。


「パーティーや仮面舞踏会で常連の悪女なんですってね」

「え?」


 聞いてないよ。


「皆様、こんな薄気味悪い女はぶちゃって(捨てて)おしまいなさい!」

「「「「ぶちゃって!?」」」」


 どこかで聞いた言葉……それに、周りの人たちに言葉が通じていないんですけど。


「チョット! 薄気味悪い目でわたくしを見ないでちょうだい! どうしてジェシー様はこんな不気味な女をお屋敷に住まわせているのかしら、悪霊退散!」

 エリーゼ・イーストは意味不明な悪態をつきながら、コーヒーの入っているカップを取り上げ、わたしに向かって中身をぶちまけた。


〈バシャッ!〉


「な、何て、ことを、するのです!」


 ランベール様から頂いたお気に入りの花柄ワンピースが……。


 許せない。絶対に許せない。死んでも許さない!


《エリーゼ・イースト絶許!》


《クジャクになれ、クジャクになってしまえ、 クジャクになって羽を全部むしり取られてしまえぇ!》


 わたしは『危機管理は自己判断に任せる』という契約内容を思い出した。要するに、危機の際には自分の判断で行動してOKということ。

 何か言われたらこの文言を振りかざせばいいのだ、アホクズ伯爵が困ればいいのだわ、ざまぁ!


 怒りついでにポットに残っていた冷めかけのコーヒーを、高笑いしながらエリーゼ・イーストの頭に〈優雅に〉かけてやった。わたしの推理が正しければ、この女は某北関東民の転生者。


〈ジョボボボ~~〉


 羽根飾りが汚れ、金色ツヤツヤヘアーがグシャグシャになった。


「愛人ごときが、わ、わたくしに何てことするのです!」


 無視してお題を吹っ掛けよう。


「オホホホホッ、ぶんぶく、茶釜の~」


 さあ、言ってごらんなさい!


「少林寺!」


「不正解、茂林寺、です! オホホホホッ!」

「クッ、ではわたくしから。水上谷川!」

「スキーと、登山! 遭難に、気を付けて!」

「く、悔しい、正解!!」

「では、次なる、お題。ゆかりは、古し〜、」

「え、ええと……と~」

「タイム、あっぷ!」


「次は完璧に暗記してくるわ、お、覚えてらっしゃい!」


 ぷるぷる震えながら謎の宣言を残したエリーゼ・イーストは、伯爵家の使用人と共に逃げ帰った。


 これでハッキリしたわ、アレは某北関東民転生者。


(ふふん、ざまぁ見なさい! アイラは最近転生したばかりだから、上◯かるたは全部暗記してるのよ! 元北関東民のくせに『エリーゼ』とか、マジウケる〜)


 逃げ帰った使用人、わたしのワンピースの洗濯は!?

 この騒動に関する責任は伯爵様が取るから大丈夫、たぶん。それに、ここを追い出されても、わたしには仕事も収入もある。サウス邸に戻されそうになったら、ランベール様を頼って永遠にトンズラしてやるもんね。


 覚えてらっしゃい、いらん契約を強要してわたしの自由を奪ったクズ!


 ――しかしこの騒動が離れ生活に支障をきたすことになるとは……ガサツでアフォなわたしは予想もしていなかったのである。



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☞故意に人に飲み物をかけるのは犯罪にあたるらしいです。

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