ランベール・ギーズ血の粛清【消えた御者】

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★ノーマン・サウス(サウス叔父)とエリーゼに裏ざまぁが入るらしいです。

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『先日ヴェストル卿はオリエンス侯爵邸を訪れました。目的はレディー・イーストとの結婚を正式に断るためと思われます。首都のウエスト邸にいるセントレの影からの報告です』


 という知らせが入ったのが昨日。

 とうとう重い腰を上げたか、愚図!


 だが、エリーゼ・イーストとの結婚をあの男がどれだけ拒否しても無駄だろう。何しろ相手は最大政治グループを率い、中央官吏の人事に口を出すオリエンスだ。

 ギーズ邸の連中がこの国にいる間は、侯爵への博打(ばくち)は打てない。


 ジェシー・ウエストが誰と結婚しようが構わない。だからと言って、アイラに被害が出てはならない。


「ウォルティー、侯爵家令嬢の嫁ぎ先候補の息子が留学から帰って来た。用意はぬかりなく」

「かしこまりました、ギーズ卿」


 その前に、ノーマン・サウスに鉄槌を!



→→→→→



その日の朝、ノーマン・サウスは頭を抱えていた。


(先日投資したレストランで食中毒騒ぎが起こってしまった……この上株価が下がったら……いや、それよりもレストランが閉店でもしたら……)


「旦那様、いくつかお手紙がきております」

「見せろ」


 一通目は大雪で大街道が通行止めになった影響について。

 もう一通は……セントレ銀行。

 ――猶予はなさそうだ。


「これから三日ほど出かける」

「お父様、どちらへ?」

「銀行だ」

「首都へ行くの? わたしも行きたい」

「駄目だ!」

「久しぶりにアイラに会いたいんだけど」

「あの娘は伯爵様のモノになったんだ、近づくな」

「モノって……その言い方は無いと思う」

「あんな不気味で頭の足りない娘でも伯爵様の愛人になれたんだ、十分だろう」

「酷い、お父様」

「口答えするな!」


「御者、馬車を出せ!」

「へい、ご主人様」

「お前は誰だ?」

「夕べ酒の飲み過ぎで親方が潰れちまったんで、弟子のオレが代わりでさぁ」

「フン、またか。アレは解雇だな」


「今日はどこまでで?」

「首都のセントレ銀行だ。途中サウスターシャーで宿をとる」

「へい、ガッテン」



※



 連日の雪のため、主要街道の一部は通行止めだ。別の道を通らざるを得ない。そこは舗装が剥げ、溶けかけた雪でぐしゃぐしゃになっていた。


「クソッ、こんな道しかないのか!」

「ご主人様、この脇道が一番安全なんで」


 カーブを曲がる地点でも速度を落とさなかった馬車は、轍に車輪を取られ、とうとう横転した。


 ズゥーン、ドサッ!


「ウッ……何をしてるんだ! 御者! 御者はどこだ、どこへ行った……誰か助けてくれ、足が……挟まれた! 車輪から足が抜けないんだ……!」


 車輪がノーマンの右足を直撃した。御者の姿はなかった。脇道のためか人通りはない。


 グチャグチャと湿った道を踏む音がし、真っ黒なローブ姿の不気味な大男が見下ろしていた。


「誰だ!」

「質問だ。答えたら助けてやってもいい」

「な、何だ! いったいお前は誰なんだ!」


「二年半ほど前……前当主一家の馬車が崖から落ちて夫妻は死んだ。お前は馬車の車輪軸を故意に緩めたのか?」

「そ、そんなことはしていない、偶然だ、偶然! たまたま雨でぬかるんでいたから、たまたま滑って崖から落ちたんだ、警察はそう言っていた!」

「ほう……ならばお前は何もしていなかったと?」

「あ、当たり前だ!」

「では御者はどこへ行った?」

「崖の下は川だ、流されたんだろう!」

「だとしても、姪を身障者にして遺産を横取りしたことは間違いないよな」

「あの娘は……元々出来損ないだ、頭は弱いし、しゃべれないんだからな……アレが遺産をもらってもどうにもならないだろう!」

「お前の姪はマトモな娘だが」

「そ、そんなはずない! もうその話はいいだろう、答えたんだ、早く助け起こせ!」


「あぁ、そうだな。お前のような小者に足は必要ないよなぁ!」

「ま、待て、助けると言ったではないか! 何が望みだ! 金か!」


 うしろから別の影が現れた。


「その辺で放っておきましょう……いや、ついでにそのけがらわしい顔も潰しておきましょう」


 グシャッ!


「生かされるだけ有難いと思いなさい、一生悪態をつきながら死ぬといい」



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『男爵家当主馬車事故』


去る一月九日午後、アウステル県南部の領地にて、サウス男爵家当主の乗る馬車が横転。当主は奇跡的に救出されたが重傷を負った。

連日の雪で道路状況が悪かったことが原因だろうと警察は結論付け、事件性は無かったものとしている。

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※



「はぁ? お父様が事故で重傷? 何やってんのアイツ!」


 サウス領の領主館ではミリーが毒舌を吐いていた。


「ミリー、お父様のことをそんな風に……お可哀そうに、ノーマン……」

「お母様は黙ってて! ジョナサン、離れにお父様を閉じ込めるわよ。小間使いを一人置けば十分よね」

「やめてミリー、そんな酷いこと……ノーマンは顔に大けがをして、しかも歩けないのですよ」

「それならお母様が付いていればいいじゃない。わたくしは忙しいの、サウス家の家政やら何やら全部取り仕切らなければならないの、お母様が何もしないから!」


「相変わらずだな、ミリー」


 現れたのはミリーの夫、ジョナサンだった。


「これからはジョナサンが当主代行をしてちょうだい、必要な書類を用意するから」

「はいはい、奥様。それならある程度俺のやり方で進めていいのか?」

「というか、儲からない株や債権はさっさと損切りしてちょうだい。近いうちにセントレ銀行へ行くから準備して」


「分かりました、奥様」



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☞容赦ないミリーでした。

☞エレン・ギーズは夫の裏工作を知りながらホッタラカシにしています。ギーズ夫妻は暗黙の了解として、お互いのことは干渉し合わないことになっているようです。

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