砦街カザオトは、風を司る風使いたちが民を護る専守防衛の街。
次代の疾風城城主を目指す凛俐(りんり)は、現城主の背中を追い、仕事と鍛錬に励む真っ直ぐな少女。
しかし、王城監督官・久藍(くらん)の来訪が、彼女の心を大きく揺らす。
二年前の出来事以来、久藍の目を見ることも名を呼ぶこともできない――
この“名を呼べない”という繊細なトラウマが、物語に静かな痛みを落とす。
そんな中、カザオトに届く怪しい手紙。
専守防衛の国に忍び寄る魔の手。
半人前の風使いである凛俐は、街を護るため、そして自分自身を取り戻すために、抑えてきた『もう一つの血の力』と向き合うことになる。
五花共和国には、水使い・焔使い・樹伯・月灯・風使いと、自然の力を司る者たちが存在する。
その中でもカザオトの風使いたちは過保護で、愛情表現が行き過ぎているほどに凛俐を包み込む。
名を呼べない久藍、過保護な仲間たち、愛情が重たい大人たち――
そんな人々に囲まれながら、凛俐は“風を失っても護りたいもの”を見つけていく。
風と心の傷が交錯する、優しさと痛みのファンタジー。
少女が自分の力と向き合い、街を護るために立ち上がる姿が胸を打つ一作。