導火線に火がついたような情熱を持て余す、四人の少女たち。
ゲーム、写真、小説、音楽、そして動画編集。
それぞれ違う「好き」を抱えた彼女たちが巡り合い、互いの思いを重ねながら、自分だけの表現を見つけていく。
ああ、クリエイターってこうじゃないとな――。
そう思わされているうちに、気づけば彼女たちが夢中になっている「そこ」へ自分まで駆けつけて、全力で応援したくなっている。
そして何より、この物語は読んでいるこちらの胸にも火をつけてくる。
恥ずかしくて、烏滸がましくて、普段は胸の奥に秘めて隠している。
そんな「創りたい」「誰かに伝えたい」という熱い思いを、これでもかと刺激してくれる。
何かを創ったことのある人にこそ届いてほしい、素敵な作品だと思います。
夢がある人。
まだ見つからない人。
好きなものはあるのに、それを夢と呼ぶことが怖い人。
この物語に登場する四人は、同じ場所からスタートしているわけではありません。
ギターしかないと思いながら、そのギターにさえ自信を持てなくなっていた桜夏。
格闘ゲームに本気で向き合う和。
写真を通して自分の「好き」を表現する千景。
そして、小説家になるという夢を抱きながら、その夢に苦しんでいる栞。
そんな四人が出会い、LM部という場所で少しずつ交わっていきます。
この物語を読んでいて特に心に残ったのは、彼女たちが相手の「好き」を、言葉だけで分かったつもりにならないことでした。
桜夏は和の大切にしている格闘ゲームを実際にプレイし、負け続けて初めて、その世界の難しさを知る。
和もまた、桜夏が担っていた動画編集に挑戦し、自分の知らないところで積み重ねられていた努力に気づいていく。
誰かの世界へ一歩踏み込むたびに、
「こんなに難しかったんだ」
「こんな気持ちだったんだ」
と、今まで見えていなかった相手の姿が少しずつ見えてくる。
自分自身も、試してみて、その立場になってみて——
実際に自分事にして理解できることがあることに、改めてハッと気づかされた瞬間でもありました。
だからこそ、彼女たちの気付きの過程が、とても好きでした。
しかも不思議なのは、誰かの「好き」を知ろうとしたはずなのに、その経験が自分自身の世界まで広げていくこと。
音楽、ゲーム、写真、小説、動画編集。
まったく違うものを好きだった四人が、それぞれの世界を持ち寄りながら、やがてバンド「FRAME」として一緒に音を奏でていきます。
けれど、彼女たちは決して最初から完成された仲間ではありません。
演奏だって完璧ではない。
考え方も違う。
ぶつかるし、迷うし、自分の嫌いな部分とも何度も向き合う。
それでも、一人では見つけられなかったものを、誰かといることで少しずつ見つけていく。
そして物語が進むほど、第1話で誰とも目を合わせたくなくて窓の外を眺めていた桜夏が、どれほど遠くまで歩いてきたのかを感じます。
夢を叶えたからでも、何もかも上手くいったからでもありません。
誰かと出会い、好きなものを知り、失敗し、笑い、時にはぶつかりながら前へ進んできた。
その時間そのものが、もう立派な青春なのだと思いました。
夢とは、最初から完成された形で見つかるものではないのかもしれません。
迷ったことも。
失敗したことも。
誰かとぶつかったことも。
誰かの「好き」に触れて、自分の知らなかった世界を知ったことも。
そんな一つ一つの時間が積み重なって、いつか自分だけの夢や未来の輪郭になっていく。
『夢はきっと全部青春でできている』
読み進めるほど、このタイトルがとても温かく胸に残りました。
夢がまだ見つからない人にも。
何かを好きでいることに迷っている人にも。
ぜひ、四人と一緒にこの未完成な青春を覗いてみてほしい物語です。
読んでいるうちに仲間が増えてゆく。
しかも、ただの仲間ではなく、みんな、生きているんだよね。
それだけにああ、いずれ、道が分かれるんだろうなぁと思うと切なくなる。
青春は線香花火のようなモノだ。
この読んでいる楽しい会話や活動も思い出になってゆく。
つい、妄想してしまう。
桜夏たちは数年後、仲間たちと集まったときにどんな人生を送っているのだろうか、と。
そう思わせてくれるのがいわゆる学園青春モノの醍醐味だ。
桜夏たちが願わくば、夢に向かって走っていけるように。
例え、卒業して一人になっても。
拙いレビューだが、ここに記しておきます。
全員が別の表現手段を持っていてそれぞれがお互いを補い合うのがいいですね。
青春でうらやましいです。あと、専門用語の解像度が高いですね。波形、15フレーム伸ばすとか、実際にやった人しか書けないディテールがある。
あと自分が個人的に気になったのが主人公の日真ちゃんがストラトを弾いている。そこが気になりました。
自分のストラトの解釈は「特徴が全部薄く入っている」。
何でもできて、どれにも寄り切らず、自分の色を決めきれていないように思います。
父からの借りパクだから普通に使い込まれた一本。父の青春をそのまま引き継いだ形になる。先が楽しみです。