Dive.11【市豪率いる遊撃隊と〝スウォーム作戦〟! 「さぁ、反撃開始だ」……!】
日本政府直属の極秘研究施設・
「角館……
「えぇ赤西さん。見ましたよ。我ながら実に見事な兵器なことだ」
「我々の兵力や科学技術の全てを集結させて完成させた兵器ですから。コイツが戦場に降り立ったなら、この戦争は貰ったも同然だろう」
「もちろん。コイツの活躍を見られるのが楽しみだ」
角館は下卑た笑みを浮かべながらコーヒーを啜った。その隣で高梨も、微笑しながら同じようにコーヒーを飲んだ。
「ところで角館。先日、脳彗軍のニューロイドを一機撃墜させましたが、あのニューロイドに搭載された新兵器は何なんだ?」
赤西は先日、
「あの機体の名は【
「零号型……?」
「はい。あの機体を今回戦場に送り込んだのは、ある種の実験的要素があります」
「……機体の性能や、武装の殺傷力などの試験運転、と言うことだな」
高梨の言葉に、角館は指を鳴らして頷いた。
角館は続ける。
「あの機体には、これまでのニューロイドでは実現できなかった超次元プラズマ式カーテンシールドを搭載し、その中心部から高圧電磁波を発生させ、機体とパイロットの脳神経にまとめて負荷をかけることに成功した新型兵器です」
「ははァ……! そいつは見事なものだ……!」
赤西は感心の表情を見せ、興奮気味になっていた。
そして角館は続けて、この機体に乗せるパイロットもすでに候補がいると言った。あの高火力破壊兵器を駆る……その候補者とは……。
「
「は!? 角館さん! ちょっと待ってくださいよ!」
寝耳に水の高梨は動揺を隠せなかった。
それもそのはず。高梨鞠菜は高梨迅之介の息子だ。だが、正確には迅之介は「養父」という立場で、鞠菜の産みの親であり迅之介の兄・
「高梨鞠菜は高いIQと高度な脳波を持っている。彼の脳神経は屛束を操るのに最適だと判断した。彼の操縦であればきっとやってくれるだろう」
「しかし……! 角館さんも赤西さんも知ってるでしょう!? 鞠菜は俺の子供なんです! しかもまだ
「すまない高梨……他に適合する人材が見つからなかった。それにこれは戦争の早期終結に近付ける大いなる作戦だ……受け入れろ」
「そんな……こんなのあんまりですよ」
「では、お前が代わりに乗るか?」
決断できずにいる高梨に対し、赤西は冷酷な表情で言った。軍の命令は絶対。決めた作戦はたとえ非人道的でも達成しなければならない。それを分かっていた高梨は、逃れられない残酷な運命に立たされたと確信し、渋々首を縦に振った。
「フォローの人員は手配する。上手くやれ」
そう言い残すと、赤西と角館は出撃の準備へと向かった。
「……鞠菜、聞こえるか?」
〔どうしたの? 迅さん〕
高梨は軍需工場にいる鞠菜に電話をかけた。そして今回決まったことの始終を、隠さずに鞠菜へ伝えた。鞠菜は動揺することも悲しむことも、ほとんどなかった。だが、電話口からも伝わる空気は、明らかにこの運命に俯いているのが分かった。
「すまない鞠菜……本当に申し訳ない……身代わりも何とか考えたんだが……ダメだった。本当に、すまない……」
〔…………出撃はいつ?〕
しかし鞠菜に帰って来た答えは、意外なものだった。
「え……? い、いつか……今週の金曜日だ」
〔今週金曜……あと三日か。事足りる〕
「本当にいいのか!? お前、死ぬかもしれないんだぞ!?」
〔……迅さんには、大学の件で色々迷惑かけたし、これくらいはしないと〕
「バカなこと言うな! 他のやり方があるとは思わないか!? 脳彗脊界はゲームや映画とは違うんだ! 本当に死ぬぞ!」
〔いいんだ。それに、俺ももう大人だ。無策に物事を決めたりはしないさ〕
「鞠菜……」
迅之介は止めたかった。出来ることなら『無理だ』と言って欲しかった。だが、鞠菜の決意と覚悟を前に、その願いは止められなかった。
迅之介も……腹を括るしかなかった。
「……分かった。じゃあ今夜、作戦の説明をする。今日は家に帰ってこい」
〔分かった。色々ありがとう〕
「…………鞠菜」
一方、新脳彗ニューロサイバー軍の兵器作戦ルームでは、
「深瀬さん、今回はありがとう」
「いいんだ剣先。戦争の早期終結は私たちの総意だ。出来ることがあれば何なりと手を貸そう」
「本当にありがとう。頼らせてもらう」
剣先と深瀬は握手を交わし、このお互いの強い意志を確かめ合った。
「それじゃあみんな、今回の俺の作戦を伝える。題して〝スウォーム作戦〟だ!」
「シャレオツな名前しやがってーこのぉ~」
「……由来はあるのか?」
「魚の群れから着想を得た作戦です。全体の流れを模型で解説しますね」
市豪は机の上のジオラマを用いて今回の作戦を説明した。
「まず、今回の作戦では指揮を執る指揮官機はつけません」
「なぜだ? 戦争において指揮を執る人間なしでは危険だ」
「そこで、無理を言って全ニューロイドに特殊な識別デバイスを組み込ませてもらいました。これはヘッドギアに各機体の情報を事前に組み込んで、それぞれの動きを把握できるようにします。それに応じて各隊員が指令を飛ばし合って、敵機を取り囲みつつ、攻撃をしかけるというわけです。周囲を取り囲む機体は、実弾を飛ばせるものがいいかと」
「だがそれでは……隊員たちの脳への負荷が大きすぎる。操縦中にブレイン・ザップを起こす可能性もあるぞ?」
「ここだけはどうしようもなかったので、パイロットの気の持ちようですね」
「だーいじょーぶかぁオメェ……」
市豪の作戦は、画期的ではあるが危険も伴うものだった。しかし、これ以上に使える手はもうない。すでに日本政府軍から最終勧告が出ている以上、早期に答えを出さなければいけない。そのためには、一か八かの作戦に出るしかなかった。
また、市豪はこの作戦に備え、彼が搭乗する新たな機体【プラネーテスИ】を開発していた。この機体は前述の技術を組み込むと同時に、市豪の脳波や操縦スキルに徹底的に寄り添った、言わば〝市豪のためのニューロイド〟と言うべきものだった。
「どうですか……この作戦で、動いてくれますか?」
「でもこの作戦……お前が考えたと考えると、やはりどこか危険だ」
「そう言われると思いました……」
六波羅や九条は難色を示した。
しかし、この反応に、ある人物が口を出した。
「……弐式もそうしたと思う」
「剣先……」
「
「弐式が戦線に出れない今、彼の無念を晴らすためにも、今は渋っているわけにはいかない。市豪は、傍から見れば無謀で無計画に思えることも平然とやってのける。我々も、そうすることで見える何かがあると思う」
「姉御らしくない……」
「どうか、頼む……!」
剣先は頭を下げた。九条が言ったように、本当に剣先らしくない姿だった。それほどに剣先は、市豪のもつものに影響を受けていたのかもしれない。
「……ハハッ。市豪が言うなら、俺はやるぜ。もちろん、酒飲んでもいいんだよな?」
「酒田……! あぁ! べろべろになっちまえ」
「私も、最期まで姉御の傍に居るよ。私も行きます」
「ありがとう。九条さん」
「……やれやれ。どうする? 可下郎」
「私も六波羅さんに従います」
「この少年の作戦には魅力を感じる。この
みんなが、市豪の作戦に頷いた。市豪は目を見開き、心から頭を下げた。
「みんな……! もう後には退けない! 弐式さんのためにも! 喪った多くの兵士のためにも! この作戦で日本政府軍を降伏させる! 出撃は今週の金曜日! みんな! この作戦で戦争を終わらるぞ!」
全員が拳を大きく突き上げ、士気を高めた。
一世一代で最後の戦に向け、今、動き出した……。
「さぁ、反撃開始だ……!」
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