非常に丁寧な筆致で描かれる、家族愛の物語。毎度毎度期待を上回ってくる安心感。今回も素晴らしい一作に仕上がっています。
年月と共に記憶を一欠片、また一欠片と失いつつある男。そして彼に寄り添う女。二人の日常を軸として物語は進行していきます。
どことなく漂う不思議な雰囲気。登場人物たちから少し距離を置いたような三人称の描写。にもかかわらず非常に読みやすく、先が気になってぐいぐいと読み進めてしまいます。
お題「忘却」が発表されてから生み出したとは思えず、ストックしてた話とお題が偶然噛み合ったから公開したのかなみたいな。そんな風に思ってしまうほどの自然な仕上がりに舌を巻かされました。
大人顔負けの若き才能に刮目せよ!
「何かがおかしい」と感じながら読み進め、最後に「妻ではなく娘だった」と明かされた瞬間、それまでの場面すべてがひっくり返ります。2回も3回も。
言われてみれば。
「朝食」と言いながら昼食を作ること、味噌汁をぐつぐつ煮てしまう、「仕事へ行く」と言う娘、仏壇への「もう行くね」という独り言、男が朝刊を何度も読み返すことなど、認知症の症状を説明ではなく日常の描写だけで見せている点がとにかくすごい。
その上で、季節を春夏秋冬と巡らせる構成も印象的。
時間の流れと記憶の喪失が重なり、「娘の記憶は増えていくのに、父の記憶は減っていく」という対比が切ない。
切なく愛が美しく響く、そんな作品です。高校生の作品です。
高校生??
人生何回目?
今の高校生、本当に凄いと思います。
【レビューコンテスト応募】
高校生作家の餡団子さんの最新作、「カクヨム甲子園」の出品作ですね。
だけど、これ、本当に高校生の作品なのか? 「あはは、オダジマさん何言ってんの?」とか、恥ずかしい事にならないよう、今タグを見直しましたが、やっぱり高校生限定ですね。
ストーリーは、秋子という老婦人が、認知症が進みつつある夫の秀司のお昼を用意してから、働きに出ていくシーンから始まります。その後、日を異にしたいくつかのシーンが積み重なっていきますが、そのうちに、この二人の言動になんとも言えない違和感が。。これはなんだ?
そして、最後は意外なオチで決着、見事な三段構成に、人生のベテランもすっかり脱帽です。
それにしても、老成しているというか、若さを感じないというか(失礼)、何十年もの人生の年輪を刻んできた方の作品であるような錯覚を覚えますね。
という感想を抱いてしまいますが、丁寧に作り込まれたことが伝わってくる良作だと思います。
カクヨム甲子園での健闘をお祈りいたします。
ヒューマンドラマ好きの方には、この作品はお勧めです。
餡団子さんらしいきれいな文章と丁寧に張られた伏線やミスリードが素晴らしい作品でした。
この作品では、秋子と呼ばれている女性と秀司というらしい男性の慎ましやかな生活が描かれています。
何気ない日常の描写が続くのですが、二人ともお互いをよく気遣っていておしどり夫婦というかんじで、読んでいて温かい気持ちになりました。
しかし、そんな幸せそうな二人の生活にどことなく違和感を覚える箇所がいくつか出てきます。
不穏なものを感じながら読み進めて、終盤で明かされた真相にはとても切ない気持ちになりました。
悲しい物語ですが、それだけでなく、作品全体に優しさを感じさせられる、感動的な作品でした。非常におすすめです!
【レビューコンテスト応募】
最初は単に仲睦まじい夫婦が何気ない会話をしているだけのように見えるのですが、読み進めていくうちに、二人の間にズレがあると感じるようになります。
そのズレはだんだんと大きくなっていき、きっと多くの読者が「ああでもない、こうでもない」と二人の真実を推測することでしょう。
物語では、二人が夫婦としての時間をひたすら刻んでいきます。
何か大きな事件が起こるわけではありません。
でも、実は重大な出来事はずっと前に起こっていたのでした。
ラストには真実が明かされますが、それは自分の予想が当たっていたかどうかなんてどうでもよくなるような、とても切ないものでした。
二周すれば二倍切なくなること間違いなし!
叙述トリックを織り交ぜつつ、それを存分に活かした切ない家族愛の物語。
ぜひ多くの人に読んでもらいたい傑作です!!