SNOW WHITE INTERLUDE -白雪姫と七つの矮星-
二ノ宮純
序章「七つの矮星」
序章「七つの矮星」
煌めきの舞台——。
12年の時を経ても、少女たちはあの日の衝撃を忘れられずにいた。
大帝都劇場のステージは眩い照明に包まれ、まるで現実ではない別世界が現れたかのように幻想的な輝きを放っていた。
床一面に敷き詰められた特殊な鏡面が光を反射し、舞台全体が静かに揺らめく水面のように見えた。
その上に立つ五人の少女たちは、
それぞれ異なる色合いの衣装を身に纏いながらも、
どこかで見事に調和した美しさを湛えていた。
夜空を駆け抜ける流星を、
その身に纏っているかのようだった。
彼女たちの輝きは、ただの一瞬の華やかさではなかった。
少女たちの運命を根底から変えてしまった、
特別な存在——
“過ぎ去りし流星たち”。
その煌めきは世代を超え、今も彼女たちの学校、
百合々咲音楽学院(ゆりがさきおんがくがくいん)に静かに、確かに輝き続けている。
そして、流星の光を浴びたのは、
百合々咲の生徒たちだけではなかった。
12年後—。
青い海が広がるベイエリアに、
白いタワーマンションがそびえ立っていた。
最上階の一室で、目覚まし時計がじりじりと煩く鳴り響いている。
「ちょっと、早く起きて!朝ごはん食べそびれるよ?」
緑髪の少女が、ベッドで深く眠る黄色髪の少女を揺さぶる。
しかし相手は枕を抱えたまま、
ぐうぐうと気持ちよさそうに眠り続けていた。
「今日ライブなんだよ?もうみんな下で待ってるんだから、早く起きて!!」
「……あと5分……」
黄色髪の少女はそう呟くと、
再び夢の世界へと沈み込んでいった。
一方、白く壮大にそびえる、まるで宮殿のような校舎の一室では、陽光に照らされて美しく輝く金髪を靡かせながら、少女が部屋の中をぐるぐると歩き回っていた。
「今日は全校集会なんだから、出て来ないで」
「けち〜。ちょっとくらいいいじゃん」
2人の少女の言い合いが、広い部屋中に響き渡る。
扉の外では、茶髪の小柄な少女が静かに待っていた。
「準備、出来たっぽい?」
廊下の奥から、煌びやかな銀髪をツインテールにした少女がやってくる。
「まだ時間かかってるぽいです」
茶髪の少女は苦笑いで答えた。
しばらくして、重い扉がゆっくりと開く。
しかし中から出てきたのは、
綺麗な金髪に赤眼の少女——ただ1人だけだった。
「なんとかなった?」
「あぁ、とりあえずな」
竹林の中に立つ、木造の校舎。
自然と調和した和の空気が、静かにその場を包み込んでいる。
今は登校の時間なのだろう。黒紫のセーラー服に身を包んだ生徒たちが、竹林の小道を歩いていた。
「なぁ、本当に行って大丈夫か?」
赤髪の少女が心配そうに尋ねる。
隣を歩く青髪の少女も、眉を寄せて同じ思いを抱いているようだった。
「無理をしなくても、それこそ1年の方々でも、
先方は何も言わないと思います……」
「大丈夫だよ」
茶髪の少女が、穏やかに微笑んだ。
「百合々咲にはみんながいるから……。
それに、私はもうひとりじゃないから」
赤髪の少女と青髪の少女が目を見合わせ、
小さく頷く。
「そうだな。なんかあったら、私たちがまたお前の羽根になってやる」
「行きましょう、結依」
「うん!」
世界を彩る星々の中で、最も煌めく「七つの矮星」が、百合々咲へと舞い降りようとしていた。
新たなる星々は、それぞれの場所から
静かに動き始めていた。
PRELUDE(前奏曲)を越えた先にある、
次なるINTERLUDE(間奏曲)。
未完のまま終わった『SNOW WHITE』の、
次なる物語が始まる。
白雪姫はまだ、夢の跡……。
これは、トップスタァを目指す少女たちの物語。
そして……
世界を知る物語である。
プロローグ 「七つの矮星」 完
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