この作品は、身近な町の魅力を「新しいものを作る」のではなく、今あるもの同士をどうつなげるかという視点から描いているところが魅力だと思います。
特に印象に残ったのが、すずと理久が元銭湯の養殖施設を訪れるエピソードです。「花の町なのに、なんで魚?」という最初の違和感に対して、実際に魚が育てられている場所や人を見ることで、魚そのものが町から浮いているわけではないと気づいていく流れが丁寧に描かれています。
もう一つ好きなのが、すずの家で魚と地元の野菜や新米を一緒に盛りつけた「秋の一皿」です。それまで単独では地味に見えていた魚が、町の食材と並んだ瞬間に、一つの土地の魅力として見えてくる。この発見はとても分かりやすく、この作品のテーマを象徴している場面だと感じました。
また、感覚で物事を捉えるすずと、地図や数字から理由を考える理久という二人の違いも上手く機能しています。単なる町おこしの物語ではなく、「魅力は物そのものだけで決まるのではなく、人にどう伝え、どう結びつけるかで変わる」という考えを、小学生の目線から自然に描いているところも印象的です。
序盤までの紹介となりますが、地域の魅力を見つけ直していく物語や、子どもたちが自分たちの視点で身近な問題を解いていく物語を求めている方にはおすすめの作品だと思います。
主人公は小学6年生の、すずちゃん。
ひょんなことから中学生のお姉ちゃんを手伝って、花で有名な町なのに、魚をアピールすることに!?
そんな、小学生のがんばる物語なのですが。
重要なポイントが「言葉」。
物語ではタブレットを使ったり、SNSを使ったり、映える写真を使ったり。
なんならくまっタネというアプリのマスコットも出てきますが……。
それでも、肝心なところでみんなの心をとらえるのは「言葉」です。
人の口から発声された音声です。
その「言葉」を使って、みんながああでもない、こうでもないと困難を乗り越えていきます。
物語の中盤。
人を誘導するために、すずちゃんは自分から観光客を誘導することになるのですが……。
ここが、とてもリアル。
私も仕事でこれぐらいの子どもたちと関わっていたことがありますが……。
子どもが他人に声をかけるって、大人が思う以上にハードルが高い。
結構、できない。
できたとしても、観光客が断ったりしたら、もうそこでアウト。子どもの口から出るのは「こんなの無理!!!」「もういや」。
子どもの口から「むりぃ」がでたら、もうあれですよ(笑)
あちゃあ、と^^;
(なのでかなり念入りに場の設定を作ったりします)
すずちゃんは、がんばるんですよねぇ。
人に言葉を伝えるって、傷つく可能性もあるってことですから。
尻込みするし、怖くて当然。
でも。
そこを乗り越えた先を、大人は見てもらいたいし、子どもに実感してほしい。
子ども向けのお話ですが、大人もいろいろ考えさせれる物語です。
町の新名物を盛り上げる大作戦!
主人公すずたちは、「魚」を本当の新名物に押し上げることができるのか⁉
感覚派のすずと、理論派の理久の小学生コンビが、問題解決に挑む姿がとても微笑ましい児童文学作品です。
「花の町なのに、なんで魚?」
すずの姉であるひまりのプロジェクトをきっかけに、町の新名物の存在を知った主人公の疑問から物語が動き出します。
そんな彼女は、町歩きアプリ「タネマル」の情報によって、新名物の人気がないことを知ったのです。
「新名物は魚? 変なの」と興味を失ってしまいそう。
ですが、すずはその鋭い感覚で「何が変なのか」を突き止めようとする感覚派の少女。
そんなすずの相棒は、小学生にもかかわらず地図を見ただけで「人の流れ」を適確に説明できてしまう理論派の理久。
この二人の会話には、小学生視点ならではの多くの気づきがあり、面白いです!
そして時には、思わず納得してしまう二人の発想に驚かされました。
二人はまだ小学生ですが、それぞれが真剣に「まだ人気がない新名物」に向き合っています。そんな二人の姿や、考えに感心してしまうシーンがとても多かったです。
また魚に関わる人たちも、真剣に新名物と向き合っています。
しかし、大人たちの考えも新名物の現状から感じ取ることができました。
「今年はしょうがないか」「でも地道にやって行こう」
そのような考えが大人たちにあるのではないかと、物語の行間から読み取れました。
ですが、その大人たちなりの真剣さが根底にあるからこそ、二人は魚の素晴らしさに気がついたのだと私は思います。
理論派の理久だけでは、このプロジェクトを追いかけなかったかもしれない。
感覚派のすずだけでは、挑戦の方向性が間違っていたかもしれない。
この二人が、考えを出し合ったからこそ、可能性が生まれたのだと思います。
そんな二人と町の人たちの挑戦を、心から応援したくなるとても明るい物語です🌱
素敵な物語を生み出して下さりありがとうございます🌼
町歩きアプリ「タネマル」をきっかけに、当たり前だった町の魅力に気づいていく物語です。
いつもの道も、いつもの花も、見方を少し変えれば違って見える。
すずと一緒に町を見ていくと、読み手まで身近にある素敵なものを見つめ直したくなります。
【当たり前の中にある、町の魅力】
すずにとって「町の花」「直売所の野菜」も当たり前の光景。けれど、姉のひまりや「タネマル」のおかげで、すぐ側にあった素敵なものに気づいていく。
すずの小さな発見が可愛らしくて、つい読み進めてしまいます。
【感覚のすず×分析の理久】
感覚で捉えるすずと、理由を探して分析する理久のやり取りも楽しいです。
同じものでも捉え方が違うと、世界の見方が変わる。どちらが優れているわけでもなく、違う視点を持つ二人だからこそ生まれる会話も印象的です。
【心に残った名台詞】
――直せるところが多いってこと
とある事柄を前にして、問題点が次々と見つかり「じゃあ、だめじゃん」と言うすずに、理久が返した言葉です。
けれど、問題点がわかれば「どうすれば良くできるか」を考える。そんなところが、とても理久らしくて印象に残りました。
見慣れた日常の中から、小さな魅力を見つけていく楽しさ。そして、まったく違う視点をもつ子どもたちが一緒に何かを見つけていく物語が好きな方に、オススメしたい作品です。
主人公は不思議そうにしています。私も首を傾げます。
どうやら陸上養殖という仕組みで、廃業した銭湯を再利用しているようです。
なるほど。
私も、主人公も多分頷いたと思います。
……ですが、お話はそこでは終わりません。
作中のイベントの中で、この「魚」はいかにも不人気そうでした。「魚がひとりぼっち……」それに気付いた主人公は、同級生をも巻き込み「花の町の魚」をイベントの目玉とするべく行動を開始します。
テンポの良い素朴な会話劇の中に、時折大人でもハッとさせられる宝石のようなフレーズが現れる事、そして真摯にマーケティングと向き合い、それを小学生の視点で描き切った大変魅力的な作品です。