ダンジョンで遭難した人々を救い、危険を未然に防ぎ、誰かが無事に帰るために命を懸ける――
ダンジョン監視員という職業の設定がまず胸に刺さる。
救急救命士として働いていたアンナが、絶望の果てに命を絶ち、異世界で再び“救われる側”になってしまう導入は重く、だからこそ彼女を救ったイケオジ監視員・ガルドの存在が強烈に光る。
無愛想で面倒くさがりなのに、誰よりも優しい。
その手に抱えた経験と痛みが、アンナの心に静かに火を灯す。
「今度こそ誰かを救いたい」
その想いが、彼女をガルドの弟子へと導き、監視員としての道を歩ませていく。
監察局の仲間たちとの交流、命と向き合う救助任務、そして“帰る”という当たり前の奇跡を守る仕事。
ダンジョンもののスリルと、救命の現場が持つリアルな緊張感が重なり、物語はファンタジーでありながら人間ドラマとしての厚みを持つ。
小さな手で命をつなぎ、不器用な師匠とともに誰かの「ただいま」を守ろうとする――
優しさと痛みが同居する、心に残る職業ファンタジー。
前世での辛い記憶、激痛で動かない体――。
薄暗いダンジョンの奥深く、仲間の屍の前で、絶望に沈むアンナの元に現れたのは、白髪交じり、無精ヒゲを生やした……イケオジ監視員!?
監視員――曰く迷宮の番人。ダンジョンから生者と、そして死者を還す者たち。
救助されたアンナは憧れを胸に、監視員たちの集う『監察局』を訪れますが、
「面倒くせえ……」
そこに居たのは覇気の無いオッサ……いやいや、自分を助けてくれた英雄『黒狼のガルド』で!?
感動的な再会を期待していたアンナは、落差への反発もあり弟子入りを志願します。しかしやはりと言うか、あっさり振り払われるその手。
けれどアンナはめげません。
そしてこのイケオジ、実は滅茶苦茶優しいのでは……?
ダンジョンでのリアルな救助活動描写も、この作品の魅力です。
救命救急士の前世を持つヒロインがダンジョン内で全滅に陥る間際にかろうじて助けてもらったダンジョン監視員の中年男性ガルドを通して「命」に向き合うバディものです。
まずキャラがいいです。ヒロインは前世のこともあり命に対して懸命に向き合い時に突っ走ることがあります。彼女のそんな誠実で懸命な姿は素晴らしいです。また彼女のポジティブで明るいキャラが重くなりがちなテーマを扱う物語の一服の清涼剤です。
そして上司のガルド。彼も過去に仲間を失った経験を持ちますがそれ故に仕事に対して真摯に誠実に向き合い(書類仕事は苦手)、可能性があるなら状況を鑑みず突っ走ってしまうヒロインに対し確実に助けられる命を重視してブレーキをかけるガルドの命を守るために嫌われ者になるのを厭わない姿はまさにプロそのもので素晴らしいです。余計なことは言わず背中で見せるその姿はとてもかっこいい!まさにイケオジです。やや白髪の混じった頭髪と無精髭の組み合わせも良いです。
監査局の中にある死体を回収して家族の渡す「回収課」やダンジョン内での盗難なでの不正に対処する「監査課」にもプロに徹するイケオジたちがいます。そんなサブキャラも魅力的です。
そして「命」を扱う物語故なのか虚飾を削ぎ落とした簡潔な文とセリフがかえって行間に静かな穏やかさと重厚さを感じさせます。読後に静かにじわじわと感じる余韻がたまりません。文中に出てくる金言は心に響くものばかりです。
この2人がこの仕事を続けていく中で何を見て何を感じ何を考え行動していくのか見守りたくありませんか?
とても素敵な物語です。お勧めです。ぜひご一読を!