ディストピアで衰弱し、最期の時を待つ男の独白。
国民に支給されるイヤホン型端末のことをLUX……つまり光と称しているが、文字通りそれはネット接続をはじめ、あらゆる社会活動、インフラへのアクセスに必要不可欠なものであり、生命線である。ただし、LUXは個人のデータログすべてを収集し、着用している限り完全な国の監視下に入る。生きる糧を得ようとすれば引き換えに自由を失う。
人間は光がなくては生きられないが、光の下ではすべてを曝け出さねばならない。
文筆業を営んでいた男は、書いた文章が政府の逆鱗に触れ追われる身となる。当局の追及の手を逃れ、違法LUXを手に入れ流れ者の集落で暮らす。しかし結局逃げ切ることはできず、管理された施設に強制収容される。
男の権力への抵抗、自由を求めた戦いに意味はあったのか。
誰も答える者もいないまま、
男はただ自分の衰えゆく肉体を感じながら終わりへと近づいていく。
ただ静かな絶望の虚無感の漂う、しかしこれは絵空事ではないという
実感のある作品だった。
拒絶など意味をなさない、と書かれている通り、巨大な権力というのは
一個人から簡単に全てを奪い取るし、自分は誇りをかけて戦ったという
自尊心の一片すら残さずに奪っていくのだろう。
それでも自分なら、自由のために抵抗するだろうか?と考えさせられる。
自由の価値について考える人におすすめの一作。