まず設定の時点で、もう勝ちだと思いました。
軍事力ではなく、アニメを外交カードにする日本。
覇権アニメ五話以降の輸出停止。
アニメ税、アニメ外交総局、作画監督の引き抜き工作、原画データの強奪。
単語だけ並べると完全にふざけているのに、作中の人物たちは全員、国益と国家安全保障を背負って大真面目に動いている。その温度差が本当に面白かったです。
特に一ノ瀬首席交渉官が最高でした。
三十二歳独身男性でありながら、魔法少女の衣装を「正装」として完璧に着こなし、ピンクのフリルと八層のスカートで国際交渉に臨む姿は、絵面だけなら完全にギャグです。
なのに、彼の言葉や判断はちゃんと外交官で、国家を守る人間のそれになっている。
このギャップが強すぎました。
アメリカ大使との交渉も、サイバーアタックも、作画監督の誘拐も、すべてが大げさなのに、なぜか「この世界なら本当に国家危機だ」と思わされてしまう勢いがあります。
そして何より好きだったのは、アニメの価値を単なるコンテンツではなく、「人間の手ぶれ」や「線の揺らぎ」まで含めた魂として描いているところです。
ふざけた世界観の中に、作り手への敬意がちゃんとあるのが、とても良かったです。
笑えるのに熱い。
突き抜けているのに格好いい。
そして最後まで、この世界のルールを一切照れずに貫き通している。
アニメと外交と国家危機をここまで本気で混ぜ合わせた、とても楽しい作品でした。
完結まで一気に読ませる勢いがありました。