男が少なく女が多い、貞操観念の逆転した世界。男子は縮こまり、女子が押す側になっている。主人公はその構造をさっさと把握して、「じゃあこの世界でギリギリまで攻めたらどうなるか」と実験を始めます。
面白いのは、彼が使う技が全部「引き」だというところです。傘とコーヒーを渡しておいて「またいつか、何か返してくれたら嬉しいな」とだけ言って去る。踏み込まない、言い切らない、答えをずらす。世界の側が反転しているぶん、主人公だけがもう一段ずれた位置に立っていて、この二重構造が効いていると思いました。
好きだったのは体育館の場面です。フォームを直すという口実で距離を詰めておいて、相手が反応した瞬間にすっと一歩下がる。「絶対ずらした」と言われても、その指摘ごと流してしまう。押しているのに攻めていない、あの感じがよく出ていました。
入れ替わった世界の中で、さらにルールを外す主人公を見たい方に。
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