タイトルからも想起される通り、本作はマルコ・ポーロの『東方見聞録』を彷彿とさせる、緻密に作り込まれた架空の帝国の記録です。語り手である見習い商人の視点を通して、異国の文化、宗教、産業、政治がリアリティをもって描かれています。
面白いのは、最新話(第6話)に至るまで語り手自身の「名前」すら明かされていない点です。しかし、それがかえって彼のキャラクター性を深く引き立てています。例えば第5話の「バルゼ鉄」のエピソードで、特産の鉄が戦争に使われた過去を知り、欲に走ろうとする叔父を宥め、職人から詫びの指輪を贈られる一幕からは、彼が単なる旅の記録者ではなく、異国の文化や歴史に対して深い理解と敬意を持つ誠実な人物であることが伝わってきます。
個人的には東欧や中央アジア周辺の文化圏をイメージしていますが、読者ごとに自由に想像の翼を広げられる余白があるのも魅力の一つです。
万人受けを狙った作品というよりは、刺さる人には深くぶっ刺さる、世界観重視の濃厚なファンタジーかと思います。設定資料を読み込み、そこから広がる世界を空想するのが好きな方には間違いなく刺さります。私もジブリ作品はストーリーよりも世界観や作品の背景の方に惹かれるタイプなのでそういう方はぜひ(笑)
冒頭で「既に滅んでしまった国」であることが示唆されているため、見習い商人の瑞々しい筆致で生き生きとした人々の生活が描かれるたび、どこか切なさが漂うのも美しいです。
彼と一緒に、かつて存在した美しい帝国を旅しているかのような気分になる作品です。