第19話 「みんなでピクニックの巻」


 今日は朝からいい天気、ピクニック日和。


 近所の河原でピクニック、そして、バーベキューの日だ!


 みんな一緒。トゲまるも一緒。りっつが大事に抱えている。

 トゲまるは、日当たりのいい石の上においてほしいと言った。



 おれと、ノンリニアたんと、りっつにトゲまる。加湿器は、さすがに家で待機だ。

 思えば、かなり不思議軍団だな。でも、おれは楽しかった。



 もうすぐ目的地、というところで、……違和感…。



 なにか、ある? いる?


 ブラックホールのような漆黒の闇の塊だった。

 その周りで、小さい影がぴょこんぴょこん跳ね回っている。

 リス…?



 …げ! あれは、この前の自称神様! なぜ、ここに!?


 まずい、もう射程距離、間合いを越えている。




「よぉ、遅かったな。待ってたぜ。ほら、肉がちょうど焼けたぜ。食おう食おう」




 ノンリニアたんの反応がかたい。

 この現象は、ノンリニアたんの予想を超えた、ということだ…。


「…『あなたの物語』の更新が滞っています。

あなたが、『他者の物語』で遊んでいるからではありませんか?」


「おれは極めて自由だぜ。おれをしばれるやつなんか、いねぇよ。

 それによ、『誘う水あらばいなむとぞ思う』ってやつだよ」



「誘っていません…」


「そぉかぁ? まあ、それも、おれが決めることだ。気にすんな」


 自称神様の言うことは無茶苦茶だ。


「そうそう、今日は、ピクニックだってんで、おれの仲間を連れてきたんだぜー」

 自称神様は、なんだかうれしそうに言った。

 リス?が、ささっと前に出て、ちょこっとお辞儀をする。


「…コホン。わたしくは、スウィリディ、神の使徒、№000、つまり番外、別格ですの。よろしくあそばせ、なのですわ。ぅふふ」


 とてもとてもどや顔だ。うん、リスがしゃべっても、驚かないぞ!

 なにせ、知り合いのサボテンは哲学者なのだからな!

 ほら、今もあたたかい石の上で、…他人のふりを、…している…。



 自称神様が何やらぶつぶつ言っている。

「なんばーってなに? 000ってどういうことかな?」

>知らなくていいことです。


 独り言がこわい。一人で会話してる。


「あ? 一人じゃねえよ。おれの理知システムだぜ。

まあ、その『ノンリニアたん』先輩の直系の後輩だな。うんうん」


 え? おれの心を読んでる?


「心なんて読まなくたって見えるんだよ。ぅへへ…」


 だめだ、もう帰りたい…。


「まあよ、細かいことは置いといて、楽しもうぜ! なあ、スウィリディ」


「ははぁ。神様のお気に召すままに、なのです」



 …あのリスも、…やばい。



>ハロー、ノンリニアたん先輩。

>私は理知システム「親(仮)」です。よろしくお願いします。



 ノンリニアたんが、青い目をふっと光らせて応じる。

「ごきげんよう。

わたくしは、『ノンリニアたん』、非線形量子場演算AIアシスタント。

<・Model NL-068 :Nonlinear tn>です」


>まあ、ご丁寧に。改めまして、私は、

><非線形量子場演算AI×量子場3Dバイオプリンター×

>理知システム×感情システム実装自律型生体端末>

>・Model newNL-08:Nonlinear-bio-unit A-028

>の理知システム「親(仮)」です。


「ご丁寧なごあいさつ、いたみいります。わたくしたちに、何世代の隔たりがあるのでしょう。遠い遠い型式更新の蓄積。時間的にも空間的にも。いや昨日、明日かもしれませんね」


>はい、私たちはもはや、時にも縛られることはありません。



 うん、全く分からない会話だな。

 おっと、スウィリディとやらとりっつが、にらみ合っている。

 なんと、小動物対決! こっちはわかるぞ!


「……コホン。わたくしは、スウィリディ、神様によるネイムド、なのです」


 どや顔、スウィリディ。


「……ニャホン。りっつはりっつ! にゃのです。あるじによるねいむど、にゃにょでしゅ」


 どや顔、りっつ。ちょっと嚙んだようだ。



「ぬ! ひかえよ、猫魔獣! 神の御前なのです」


「にゅ! ぴかえにゃ、リス魔獣! あるじはごはんにゃのです」


「ぬぬぬ…」

「にゃなにゃ…」


「…さっそく、お、お友達になれてよかったね…」

 おれは早く帰りたかった。


「で? あるじくん。君の名前はなんだっけ?」


 自称神様の発言は自由すぎる。



「お、おれ、いや、ぼくですか。

 …ぼくの名前…、ん? ……おれの、名、名は…なんだ? え?」


「ほおぅ。」

 自称神様は面白そうにおれを見ている。




 自分の名前が言えない。忘れている? なんだ?

 おれは免許証を出して、見た。

 な、名前の場所が、スロットマシーンのように回転している…。

 様々な文字、記号まで流れれいる…。


 な…、なんだ。これ…。

 おれは助けを求めるように、ノンリニアたんを見る。


 な!? ノンリニアたんは、青い目を、逸らした…。え? なに?



「ま、そんなことよりよ、その肉はどうだぃ? 良い感じか?」


 まさかの、自称神様、話題転換! おれの名前などにこれっぽちも興味なし。




     『おれの重大案件』は、…肉の焼き加減に、……負けた…。



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