電車で通勤または、通学をしている人間であるならば、
一度は経験したであろう経験。
かといって、なかなかその日の話題になるほどでもない、ちょっとした経験のくせに、
一度起きたら脳味噌にシミのようにこびりつく経験。
私も何度か体験したことがある。
満員度百%超えの電車で、なぜか空席があり、満員のことを考えるなら誰か座るべきなのだが、
どういうわけか誰も座らず、自分もまたなぜか座ろうと思ったことがない。
アレはどういうことなんだろう?
と、私も常々考えていた。
ジャパニーズ特有の、譲り合い探り合いの精神が複雑に絡んだ故の事かそれとも、
何か理由があるのか?
物語の舞台は、やはりそれが存在している車両の中。
しかし、ニノ前先生の手法は巧妙だ。
ホラーの真髄とは、読み手に想像をさせること。
この手は、この先生の特徴でもあり、もはや専売特許なのだろう。
何が言いたいかというと、謎を残して帰るのだ。
今回も、考えなければならない謎が多い。
そして、考えれば考えるほど、恐怖のドツボに、こちらが勝手にはまっていくのだ。
今回の話の流れはこうだ。
・誰も座らない席がある。
↓
・反対側の車窓には、女性が座っているのが見え、本を読んでいる。
↓
・事故発生
↓
・女と目が合う。
差し当たり、考えなければならない謎は主に、この女性の事だが、
・何を読んでいたのか?
と、
・彼女は何者なのか?
の二点だろう。
何を読んでいたのか? の中にも謎があり、
今回で言えば、
『小説というよりかは絵本に近い』らしい。
……なぜ、『絵』が書いてあるとわかったのだろう?
表紙がそれっぽかったのだろうか?
それとも、車窓に反射してある程度中身が読めるのだろうか?
もう一点、
彼女は何者なのか?
ともう一点、
『事故』との関係は?
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ここからはネタバレを含むので、読まれていない方はご反転ください。
自分なりに色々と考えてみたが、
やはり主人公とこの女性とでは、何か関係があった。
というのが、……まあ違うだろうが、なくはない線かと思った。
つまり主人公は女性が日常的に、図鑑だか絵本だかを読んでいるのを知っていた。
(女性が幼く見えるのは、他界されたのが子供で、生きていたら今頃大学生くらいだった?)
あまり、思い出したくない関係のようで、それでも意識の裏側に度々現れる。
例えば、誰も座らない席の向かいの車窓に。
……
例えば、電車ではなく、車に乗っていた。
幼い子は、平気で本を読みながら危険な道路を歩く。
ブレーキが間に合わず、事故を起こしてしまった……。
まあ、そんなわけがないだろうが、このように一つの書で深く考察できるのが、この先生のホラーである。
ご一読を。
二ノ前先生の作品に、外れは無いと、いつも言っていますが、
この作品も、読者の意表を鋭く突く作品です。
この小説に出てくる主人公は、一種の、未来を見ていた……。
これ以上書くとネタバレになりますので、書けませんが、
最後の最後で、全ての、怪奇現象が、物語の中で、回収されます。
最早、時間の逆転現象としか、言うしか有りません。
ですが、SFでも無くて。完全なホラー小説なのです。
ホラーであって、まるで、SF小説を読んだような、不思議な時間の流れです。
もう一度、言います。
実に不思議なホラー小説です。是非、御一読、してみて下さいね。