魔王と図書室
ジルコニウム
単話
アナログ時計の針の音がやけに響く。
人気の少ない図書館は、紙と埃の匂いが心を落ち着かせた。
新学期、図書委員としての初当番である。当番は二人制なので、自分ともう一人、どんな人物に当たるか不安がある。
しかし、図書委員に立候補する者ならば、コミュニケーションに積極的ではないだろう。勿論、それは好都合なことだ。
これは自虐に近い期待でもあるため、ただの偏見よりも自信があった。
ふと、窓の外が暗くなる。
雲でも出てきたか…?と思い、ふと目を向けると、空がペンキで塗りつぶされたかのように紫一色であった。
そして、そのことにリアクションを取っている暇など無い。突如、図書館の入り口に落雷が発生したかと思うと、白い煙の中から黒いシルエットが浮かび上がる。
「…埃臭い図書館だな。どうも、魔王である」
煙から出てきたのは、魔王だった。
「いや、ちょっと待てや」
目の前で発生した情報のすべてに対する意味が不明だ。いやもう、目の前にいる角の生えた大男が本当に魔王であれば、それで事情の理解を放棄出来るのでもうそれでいいのだが。
「なんだ、貴様。デスコンドルが闇魔法を喰らったような顔をして」
「いやそんなパチモンことわざは知らないですけど」
改めて自称・魔王を観察する。
紫色の髪に赤黒い角、黒い肌、白い眼、
高校の学ランの下に……?「魔王」とそのまま漢字で書かれたTシャツが……?
「ほな、魔王かぁ」
「そう言っただろうに」
そう言うと、魔王はスタスタと、私の立つ貸出カウンターの中へ入って来た。
「いや、ちょっと」
私がちょっと本気で厄介そうな顔をすると、魔王が眉を八の字にして、
「俺は図書委員の当番だ」
確かに、そう言った。やはり人に偏見など抱くものではないな。
「どうした、オークが水に溺れた時のような顔をして」
「もう、ことわざとかじゃなくてただの情景じゃないっすか。あと可哀想だし」
魔王は私の隣に立って動こうとする意志を見せない。悲しいことに、私の図書委員生活はこれから魔王と過ごさねばならないようだ。
「この図書館はラノベとか置いておるのだな」
「どこからツッコめば」
魔王と図書室 ジルコニウム @zirkonium
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