第18話 12歳のイングリス6
「レオンさんじゃないけど、ホント嫌な感じだったよね。ね、クリス?」
レオンに続きながら、ラフィニアが不貞腐れていた。
「そうだね――ちょっとね」
確かにラーアルは、あまりいい成長の仕方はしていないようだ。
「
「ま、他にも結構
レオンはひょいと肩をすくめる。
「
比較的田舎のこのユミルでは、
「命綱は向こうに握られてんだ。だから、どう思ってようが奴らの目の前ではニコニコお愛想しといたほうがいいぜ? 君らは女の子で、しかも可愛い。もうちょっとすりゃあ、立派なレディだ。多少辱められたり、胸なり尻なり撫でられたりしてもガマンだぜ? 俺だって奴らの前に出りゃ、そりゃあもうヘーコラしてんだからよ? 必要とあらば靴でも舐めるぜ!」
笑顔で言う事だろうか? 剽軽な性格である。
「あっはは! 可笑しい、レオンさんって面白い人ですね!」
ラフィニアも面白がって笑顔になっていた。
「おう、顔じゃあとてもじゃないが御同輩のラファエル君に及びませんからなぁ。ご婦人方の関心を引くには、このよく回る口で勝負せんとな……っとああいたいた! こっちだお嬢ちゃん達!」
とレオンがイングリス達を連れて行ったのは、中庭に出た所にある木陰だ。
そこに一人、葡萄酒の入ったグラスを持った人影が佇んでいた。
見た目の年齢は十代後半、輝くような金髪。吸い込まれそうな深みのある碧眼。
イングリス自身とラフィニアを除けば、これほどの美しい少女は見た事が無い。
夜会の場だが、ドレスではなく騎士風の鎧を纏ったままだ。
腰には雌雄一対の双剣を佩いている。
喧騒から離れて一人で佇む姿からは、孤高に生きる猫のような気高さ、近寄り難さを感じるが、その反面どこか寂しそうにしているようにも感じる。
そんな繊細そうな少女に――レオンは先程と同じで陽気に近づいて行く。
「よぉエリス! そんな一人で黄昏れてねえで、中で楽しめばいいのによ。料理とか結構美味かったぜ?」
声をかけられたエリスと呼ばれた少女は、はぁとため息を吐く。
レオンを恨めしそうに睨む表情は、毛を逆立てて相手を威嚇する猫のようだ。
しかし驚くのは、どこからどう見ても少々不愛想な美少女にしか見えない。
この少女が
究極の
実際自分の目で見てみないと、なかなか信じられそうにない。
「その気が無いから、ここにいるのよ。私に構わないで」
「まあまあそう言うなよ。お客さんもいるんだからさ。お前に会いたいって子達がさ」
「え? 私に?」
「そうだぜ、ラファエルの妹のラフィニアちゃんに、従兄妹のイングリスちゃんだ!」
と、レオンがイングリス達を紹介すると、
「馬鹿ッ! 止めてよ!」
レオンに向かって大声で怒鳴る。
怒鳴るだけでは済まない。手が出た。レオンは横面を張り飛ばされていた。
「いっててて! 何も殴る事はねえだろ、この子達が楽しみにしてたんだからさ……!」
その剣幕にイングリスもラフィニアも驚いてしまった。
「あ、あの……何か――?」
驚いて尋ねるラフィニアに、エリスは目を伏せて視線を合わせなかった。
「ご、ごめんなさい……!」
それだけ言うと、逃げるようにその場を後にしてしまう。
「え、ええと――レオンさん、あたし達何か悪いことしましたか……?」
「あ、謝りに行った方がいい、かな……?」
「いやあ、いいんだよ。君らは何も悪くないさ。俺が空気を読めなかっただけだなぁ。驚かせちまってごめんな? よし、中に入って飯でも食いながら、最近のラファエルの話でも聞かせてやろうか? 知りたいだろ?」
「やったあ! ラファ兄様、元気にしてるんですか?」
「ああ元気だよ。あいつはできた奴だからなあ、王都でも色々手柄を立ててるよ。一つ一つ話してやるからな」
「はいっ♪」
イングリスは嬉しそうなラフィニアの様子に目を細めた。
この間お願いしたラフィニアのお願いは『ラファエルが元気でいますように』だったのだが、レオンの話を聞けばそれが分かる。
一応お願いが叶ったと言ってもいいかもしれない。
そんな時だ――
「「「きゃあああああっ!」」」
室内の会場の方から、悲鳴が轟いた――
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