白い空間で存在を見守る幻想的な短編と、港町ガラノース王国を舞台にした異世界日常ものの二本立てですね。前半の抽象的な独白パートと、後半のアイリスとラディの軽妙な会話が対照的で面白かったです。人懐っこいラディに振り回されつつも素直に答えてしまうアイリスの受け身な性格が可愛らしく、「虹の雫」の噂話から物語が動き出しそうな予感にワクワクします。丁寧な世界観描写もあって読みやすかったです。
タイトルにある『イーリスの箱庭』という言葉通り、真っ白なキャンバスにディテールが書き加えられ、精巧なジオラマが完成していくかのような映像美が素晴らしいです。しかし、世界が豊かで暖かく、命に満ちていくほどに、逆に主人公の「動けない」「思考が曖昧になる」という異質さが際立ち、美しい楽園の中に冷徹な断絶が浮き彫りになっていく構成が見事です。