概要
見ているだけで、よかったはずなのに
朝の満員電車で、急ブレーキによろけた私を、とっさに支えてくれた男の子がいた。ろくにお礼も言えないまま別れたその人は、教室に入って思わず固まってしまった――同じクラスの、桜井朝陽くん。サッカー部のエースで、誰からも好かれる、人気者だったのだ。
それからというもの、私はうしろの席から、つい彼の横顔を目で追ってしまう。話しかけたい。近づきたい。それなのに、「おはよう」のたった一言さえ、喉の奥でつかえて出てこない。まぶしすぎて、まっすぐ見ることもできない。きっと私は、これからもただ、遠くから見ているだけなんだ。
けれど、一冊の本をきっかけに、止まっていたはずの距離が、少しずつ動きはじめる。お節介で頼れる親友の七海。無口だけど、なんでも見透かしてしまう彼の友達・蓮。二人に背中を押されながら、臆病な
それからというもの、私はうしろの席から、つい彼の横顔を目で追ってしまう。話しかけたい。近づきたい。それなのに、「おはよう」のたった一言さえ、喉の奥でつかえて出てこない。まぶしすぎて、まっすぐ見ることもできない。きっと私は、これからもただ、遠くから見ているだけなんだ。
けれど、一冊の本をきっかけに、止まっていたはずの距離が、少しずつ動きはじめる。お節介で頼れる親友の七海。無口だけど、なんでも見透かしてしまう彼の友達・蓮。二人に背中を押されながら、臆病な
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