何となく気が乗らない。
犬も進まなくて、面白くない。
もう、絶景の場所に行きたくなる!
そんな悶々とした気持ちで過ごす主人公。
ある日、いつものように犬の散歩に出かけるが、気分を変えて違うコースに行ってみる。
最初に犬が気づいたのだろう。
ワンワン!と吠えて飼い主に教える。
「ほら!携帯いじってないでみてごらんよ!」
と言っているよう。
主人公が、携帯をから顔をあげると、色とりどりの日常の景色なのに輝いてみえる。
ここの描写がとても素晴らしく、気持ちが上がっていくのが、よくわかった。
読んだ後は、ホワホワしたいい気持ちになれる!
そんな素敵な作品です。
みんなも是非読んでみて欲しいです。
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父親の言葉へのモヤモヤや、寒さ、進まない散歩といった「退屈でちょっと憂鬱な現実」から逃げるようにスマホの動画を見ていた主人公。
そんな彼が、ノワールのひと吠えで現実の景色に引き戻され、世界の色を取り戻していくプロセスが非常に鮮やかで、読んでいて心がじんわりと軽くなります。
スマホの中の派手な絶景ではなく、「冬なのに鯉のぼりがある」という身近な違和感が、主人公の思考を現実へと引き戻すスイッチになっているのが秀逸です。これを機にスマホを消したことで、これまで見落としていた街のディテールが次々と目に飛び込んでくる演出にハッとさせられます。
747文字という短さで、これほど読後感の豊かな作品はなかなかありません。
主人公がスマホで海外の絶景を眺めながら歩いているのに、目の前にあるものが見えていないという冒頭の構図が、すべてのテーマを先取りしています。ノワールが吠えなければ、季節外れの鯉のぼりも、見たことのない花も、駄菓子屋も、心地いい風も、気づかぬまま通り過ぎていた。
「そこそこ綺麗」という言葉の選び方が絶妙です。「すごく綺麗」でも「普通」でもなく、そこそこ。完璧ではないけれど、それがかえって心地よいという感覚——スマホの向こうの絶景と対比したときに、この「そこそこ」が輝いて見えます。
父との会話を引きずったまま歩き出した主人公が、犬に引っ張られるようにして少しだけ前向きになる終わり方も好ましい。大きな変化ではなく、「もう少し歩こうか」という小さな一歩で締めくくるのが、作品の温度にぴったりでした。