読みながら、顔が引きつるような感覚がありました。
どちらが優しい、どちらが冷たい、という対比のお話ではないんですよね。ハルカがその異質さを抱えたまま人に馴染もうとしているお話として読みました。的外れでしたらごめんなさい。
ハルカは、動物の死骸を見ても「気持ち悪い」「かわいそう」という感情より先に、責任や手順のほうへ自然に動いていく人ですね。直接触れないように車道脇へどけ、通報先を調べる。その動作が極めて合理的で(プリント紙を内側に畳む流れまでが鮮やかで)、かつ、善行をしているという意識すら薄いように見えるところが印象的でした。
ハルカはずっと愛華ちゃんの反応をよく見ています。
けれど、それは気配りというより、社会の中で浮かないための処世術、生きるためのノウハウなんですね。
こう言われたらこうする、こういう反応にはこう返す──そうして振る舞いを一つずつ身につけていく姿に、ぞわっとしながらも、それ以上に切実なものを感じました。
ラストのメモに加えられた「動物の死骸を見たら、放置する」という一文。
これはハルカの本心というより、愛華ちゃんとのやりとりから得た、“人間として浮かないための正解”なのだと思いました。
本来のハルカは、死骸をどけて、連絡先を調べて、小学生の頃には実際に仔ウサギを埋めた側の人なのに、他者の反応を見て「次からは放置する」と学習してしまう。ここ、とても苦いですね。
ハルカは倫理や優しさを持っていないわけではないのに。でもそれを他人の反応に合わせて修正してしまうところがやるせなくて……
ほかのメモの内容も、相手の気持ちを自然に読める人にとっての当たり前を、ハルカが一つずつ規則として収集しているんだなと思いました。
愛華ちゃんに新しい彼氏ができたと聞いたとき、もうバスボムを用意しているところも、悪意ではなく規則に従った準備なのだと思うと、なんとも言えない気持ちになりました。
すごいですね。しばらく読み返してしまいました。
読み終えて時間が経った今も、言語化しづらいものが胸のうちに残っています…
作者からの返信
コメントありがとうございます。
こんなに丁寧に読んでいただけ、しかも何度も読み返してくださったこと、本当に嬉しいです!
面白い作品にしたいという一心で、手探りで書きました。今回いただいた感想を読んで、「ああ、自分はこういうものを書いていたのかな」と気づくところがありました。
からももさんが読み取ってくださった『ハルカがその異質さを抱えたまま人に馴染もうとしているお話』というのは、この作品を端的に表していると思います。
もちろん、ほかの読み方やとらえ方をしてくださっても嬉しいです。面白い、つまらない、気持ち悪い、怖い……読むかたに、なんらかの感情をもっていただけたら本望だと思って書きました。
ハルカの切実さ、いびつな生き方を、断罪も憐憫もせずに受け止めていただけたこと、ありがたかったです。
猫の死骸の通報に『善行をしているという意識すら薄い』とあり、はっとしました。それと、バスボムの『悪意ではなく規則に従った準備』と読み取っていただけたところ。
ハルカに欠落していたのは、善意と悪意でもあるのですね。
からももさんの感想を何度も読んで、手探りだったハルカの輪郭がどんどん浮かび上がってきています。
このように深く読み取っていただけた感想やレビューがいただけたこと、ほんとうに嬉しいなぁと、何度も何度も読み返しています。
レビューもありがとうございます。
ざらついた余韻が残るという言葉、大事に受け取っています。こんな風に、一言で表せない作品が書けたこと、自分の中ですごく大きな意味になっています。
こんなに心にぐっとくる感想とレビューを寄せてくださって、本当にありがとうございました!
への応援コメント
これはクール!
切れ味がヤバい。
現在の愛華を冷淡に描き、子ども時代に遡って、少し経てば忘れるような悲しさに薄っぺらな涙を流す愛華に冷ややかな視線を注いだかと思えば、主人公側にひっくり返すという、このソリッドな構成、お見事です!
「正しい人間としての振る舞い方」ってマニュアルに決定版がないので、周りの人たちから「どうやら、こう振る舞うものらしいぞ」というサンプルを集めながら生活している実感が私はけっこうある方で、このテーマは刺さりました。
それでいて、どっちも人間らしさが残ってるのもいいですね。
愛華でいうと、露骨に嫌な顔したり、無駄にスケジュール共有したり。仔ウサギのことを覚えているのはハルカの方であったり。
この人たち——ひいては私たち現代人——はロボット人間です、みたいな単純な話でもない、この微妙な生っぽさがとても好みです。
とても良い読書体験でした。ありがとうございました!