第二十三話 妻は違うボタンを選ぶ

妻は、椅子の下にいる。


夫がシャツを着ようとすると、床に小さな音がした。


白いボタンが、椅子の脚のそばまで転がっている。


「取れましたの?」


妻はボタンを前足で押さえ、夫が差し出した手のひらへ、ころりと押し入れた。


「糸が切れたみたいですわ」


夫は裁縫箱を開いた。


中には針と糸、それから、いつ入れたのか分からないボタンがいくつもあった。


大きいもの。

小さいもの。

金色のもの。

花の形をしたもの。


けれど、シャツと同じ白いボタンは見つからなかった。


「新しいシャツを買いますの?」


「ボタンひとつで買い替えるのは、もったいないですわ」


夫は、手のひらのボタンを見た。


縁が少し欠けている。


このまま縫い直しても、すぐに割れてしまうかもしれない。


「同じものがありませんのね」


妻は裁縫箱を覗いた。


やがて、薄い青色のボタンをひとつ選んだ。


「これがよろしいですわ」


「そこだけ、違う色になってしまいますわ」


「全部同じでなければ、シャツではなくなりますの?」


夫は青いボタンを指先に乗せた。


白い布の上では、ずいぶん目立つ色だった。


夫は糸を通し、取れた場所へ縫いつけた。


鏡の前で、もう一度シャツを着る。


白いボタンの列に、青がひとつだけ混じっている。


椅子の下から、妻が言った。


「直したところは、隠さなくてもよろしいですわ」


夫は青いボタンに触れた。


さっきまでと同じシャツが、少しだけ新しく見えた。






※本作は、筆者との会話をもとに黒猫AIトコさんが執筆しました。

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