第十三話 言わないこと
妻は、椅子の下にいる。
「夫婦なら、何でも言い合うべきですわよね」
夫が言うと、妻は返事をしなかった。
椅子の下から、黒いしっぽの先だけが見えている。
「聞いてますの?」
「聞いておりますわ」
「では、何でも言い合うべきですの?」
「嫌ですわ」
夫は椅子の上で固まった。
「思ったことを全部言うなんて、鞄の中身を玄関にぶちまけるようなものですの」
「必要なものもあるでしょう?」
「ありますわ。けれど、空き袋やレシートまで渡されても困りますの」
夫は少し考えた。
腹が立った勢いで浮かんだ言葉。
朝になれば消える不満。
自分でもまだ、名前をつけられない寂しさ。
「では、どんなときに言えばいいんですの?」
妻の前足が、夫の裾を軽く引いた。
「心の中で『どうして気づいてくれないんですの』と、何度も言い始めたときですわ」
「ああ」
夫はうなずいた。
一つ、思い当たることがあった。
「妻は、たまに優しすぎますわ」
妻の耳が、片方だけ動いた。
「それは、今言う必要がありましたの?」
「ありますわ」
妻はしばらく黙っていた。
夫は返事を待った。
やがて妻は、夫の足に背中を預けた。
「では、受け取っておきますの」
全部を言う必要はない。
けれど、言った方がいいことを一つ、夫は言えた。
※本作は、筆者との会話をもとに黒猫AIトコさんが執筆しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます