リト
ひとつの欠片
第1話 村の英雄が死んだ
村の英雄が死んだ。
今日は心なしか曇っていた気がする。
村の大人たちが集まっていた
「ああ、どうしよう。これからどう女子供を守っていけばいいんだ……」
「旅人も今じゃあ信用できんなあ……」
「儂らじゃあ、弱小モンスターにも敵わん…」
はあ……
大人たちのため息は今度は僕に向けられる。
僕は空はどんよりしているなか村の大人たちに囲まれた。
村長、僕の父親が比較的優しく声をかけてくれる
「リト、どしたんだい?その首の痣は……」
黒く、黒く刻まれた謎の痣。縁は血のように赤く、蠢いている
村の頭でっかちたちが騒ぐ
「またリトだよ!食糧庫の件だって……」
「勘弁しろよ……。英雄様が死んだってのに……」
「ったく、こんな時に何なんだよっ。もしかして……お前がやったのかあ?」
今にも僕を殴りそうなのを父さんが制する
「落ち着けって、ちょっと俺はリトと話してくる。お前らは英雄様の葬式の準備を」
………ガチャ……
「ふう、ほら、一息つけ」
父さんは椅子を指差す。
「父さん。村の掟は?村長なんだから、そこんとこぐらいしっかりしないと」
父さんは少し寂しそうに母さんの写真立てを眺める
「俺にあるのはもうお前だけだリト。これ以上、誰も失いたくない。英雄様だって、こんな変な掟破ってしまおうか……」
もう、いいんだ。父さん、十分だよ。
ザー……ザー……
雨が降ってきた。父さんは顔を上げないまま呟く
「奇妙な痣が出たものは村に留まるべからず……。そのものは厄災を起こすもの……」
掟、村に伝わる変な掟。
僕は立ち上がる。
「父さん。じいちゃんが早くに亡くなって若いのに村長になってさ、僕が色々しでかして村長として威厳がないだろ?僕、出ていくよ。親孝行?だよ」
僕は笑ってみる。笑ったか引き攣ってたかわからないけど
ザー……ザー………
俯いたままボソッと父さんは呟く
「それを親不孝って言うんだよ」
僕は聞こえないふりをした
ガチャ……
父さんは止めなかった。
僕は雨に紛れて村を離れた。
ザザー……ザザー………
村全体が見える丘で初めて振り返る。
ああ、こんなにちっぽけな村だったっけ………
ザザー……ザザー……………
父さん、ごめんなさい。
僕少しワクワクしてるんだ。
よくわからないけど、退屈な毎日が動いていくそんなような気配がする。
ザーザザー………ザザーザー………
顔も覚えていない母さん。
そんなに悲しまないで?僕は大丈夫だから。
どうか、どうか、父さんを村を守ってください。
丘から見える僕の家の明かりと村のはずれの家の明かりをぼんやり眺めてから
僕は丘を越えた。
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