この世界で生きている人々の息遣いが感じられるところが、大好きな作品です。
郵便魔女という職業、そして世界観について、とても丁寧に作り込まれています。
ですがそれだけにとどまらず、「この世界の人たちはどう暮らしているのだろう?」「どんなふうに、仕事をしているのだろう?」といった、日常の風景まで自然に描かれています。
設備の説明も、説明するためだけに存在せずに、生活の一部として溶け込んでいるので、読んでいて心地よい。
本当にすぐそこに、人々が暮らしているかのよう。
世界の隅々まで歩いてみたくなるような、温かなファンタジーが好きな方におすすめしたいです。
手紙といい郵便いい、よく考えてみると不思議な気持ちになってくる。本人同士は遠く離れているし、場合によっては過去と未来といった形で時空すら断絶している場合だってある。それなのに繋がれるというのは、なんだか不思議な気持ちだ。
本作はその名の通り、人と人を繋ぐ為に空を往く郵便屋さんの魔女のお話だ。一見地味な仕事に見えて、空を飛ぶというだけでもかなり危険だし死にかけることだってある。それでも、魔女は飛ぶしかない。長らく音信不通だった娘からの便り、ケンカ別れした兄弟の最期のメッセージ。そういった大切な『つながり』を守る為に彼女達は今日も飛び続ける。
……そんな彼女達が舞う空に、異変が起ころうとしていた。
風路という魔法インフラの設定がまず魅力的で、配達中に道が消えるという冒頭の異変からすんなり物語に引き込まれました。リネットが「消えたあとの痕跡を感じ取れる」という能力も、単なる便利な魔法ではなく、彼女の仕事への姿勢や責任感とセットで描かれているのが良かったです。
十六年遅れの手紙、四十二年前に廃止された郵便局の消印、三日後の予告時間軸の異なる手紙が重なり合っていく構成はミステリー的な緊張感もあり、続きが気になります。郵便配達という静かな仕事を通して人と人の繋がりを描く作品は多いですが、本作は「届けられなかった手紙」自体に物語の謎を仕込んでいる点が独自性を感じさせます。
説明を抑えた文章で世界観や人物像を伝える筆致も丁寧で、ノスタルジックな雰囲気を保ちながら謎解きを楽しめる一作だと思います。