第1話 ヒモの適性

 俺――和田わだたけしは気がつけば、美少女のヒモになっていた。


――『ご飯できましたよ。食べてください♡』


――『部屋の掃除をしました。ついでにベッドのシーツもえておきました♡』


――『肩が凝ってますね。みましょうか?♡』


「……ヤバすぎる」


「? 何か言いましたか?」


「いや、なんでもない。気にしないでくれ」


 キッチンに立ち、夕食を作っている美少女。名は片平かたひらもえという。


 


 つまり俺は、七歳下の女の子にやしなわれている。


 マズい。これはマズい。


 俺が築き上げてきた自尊心プライドが、音を立てて崩れていく。


「(人に頼らず自立しないと……!)」


「ご飯できましたよ。今日はたけくんが好きなハンバーグです♡」


「いや、いらない」


「え」


「俺はもう大人なんだ。一人で生きていかないと――」


「中にチーズが入っていますよ♡」


「食べます」


 俺は迷わず即答した。








「顔色、良くなってきましたね」


「……おきゃげしゃまで(おかげさまで)」


「ふふっ。美味しそうに食べてくれて嬉しいです」


 リビングの食卓。対面には片平が座り、俺が食べる様子を愛おしそうに眺めている。


「私、たけくんといるだけで幸せです」


「こんな何もできないダメ男なのに?」


「そこが良いんですよ。お世話のしがいがあります」


「変わってるな」


「そんなことないですよ。たけくんは魅力的な男性です♡」


「……」


「あ、照れてる」


「照れてない」


「ツンデレな所も可愛いです♡ ……だから」


 真剣な目で俺を見つめる。


「――いなくならないでください。ダメでもいい。情けなくてもいい。カッコ悪くてもいい」


「……なぜそこまで」


「分からないんですか? たけくんは鈍感ですね♡」


 彼女は呆れたように溜息をつき、そして柔和にゅうわな笑みを浮かべた。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る