第12話 光刃
四層のゴーストに三撃かかった理由を、樹は一晩かけて計算した。
《光刃》の威力はINTに依存する。今のINTはほぼ最低値だ。INTを上げれば威力が上がり、一撃か二撃で仕留められる。
問題はトレードオフだ。
INTに振るには、AGIかSTRを削る必要がある。AGIを削れば機動力が落ちる。STRを削れば物理攻撃の威力が落ちる。四層以降はゴースト以外のモンスターも強い。どちらも削りたくない。
(経験値でスキルを強化するか)
もう一つの方法がある。スキルそのものを強化することだ。
《光刃》は現在下級。中級に上げれば、INTが低くても威力が増す。しかし購入コストが高い。
経験値残高を確認する。八百二十。
《光刃・中級》の購入コスト:九百。
(あと少し足りない)
今日中に稼げる。
◇
四層で経験値を稼ぎながら、樹はもう一つのことを考えていた。
MPの管理だ。
《光刃》はMPを消費する。今まで一層から三層では問題なかった。しかし四層でゴーストが増えると、消費量が増える。MPが切れたら《光刃》が使えなくなる。
(MPもステータスに関わる。INTを上げればMPの最大値も上がる)
やはりINTへの投資が必要だ。ただし全部を一度に変えるのは危険だ。小さく試して、データを取る。
STRから1ポイントだけ抜いて、INTに回す。
体感が変わった。剣が少し軽くなった感覚。しかし《光刃》を発動したとき、光の密度が上がった気がした。
ゴーストに《光刃》を当てる。
二撃で仕留めた。
(STR-1、INT+1で一撃分短縮できた)
データが確定した。
◇
夕方、経験値が九百を超えた。
《光刃・中級》を購入した。
効果が上がった。発動時の光量が増す。次のゴーストに当てる。
一撃で仕留めた。
「……一撃ですか」
花音が目を丸くした。
「《光刃》を中級にした。INTに少し振った」
「STRとAGIは?」
「STRから1ポイント削った。AGIは維持している」
「一ポイントでそこまで変わるんですね」
花音は感心したように言った。
「変わらないように見えて、積み重なる。それが《自由配分》の本質だ」
樹はそう言ってから、今日のデータをノートに書き込んだ。
MP管理の基準ラインも確定した。一日の探索でMPが切れない消費ペースを守れば、四層を安全に回れる。
(次は試験だ)
Dランク試験まで、あと二週間。
――続く
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【作者コメント】
第12話です。お読みいただきありがとうございます。
「変わらないように見えて、積み重なる。それが《自由配分》の本質だ」——今回はっきり言語化できた気がします。一ポイントの調整がゴーストを一撃で仕留めるまでの差になる。地味だけど確実な積み上げが樹の強さです。次話は試験前日です。
日向 なつ
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