第12話 光刃

 四層のゴーストに三撃かかった理由を、樹は一晩かけて計算した。


 《光刃》の威力はINTに依存する。今のINTはほぼ最低値だ。INTを上げれば威力が上がり、一撃か二撃で仕留められる。


 問題はトレードオフだ。


 INTに振るには、AGIかSTRを削る必要がある。AGIを削れば機動力が落ちる。STRを削れば物理攻撃の威力が落ちる。四層以降はゴースト以外のモンスターも強い。どちらも削りたくない。


(経験値でスキルを強化するか)


 もう一つの方法がある。スキルそのものを強化することだ。


 《光刃》は現在下級。中級に上げれば、INTが低くても威力が増す。しかし購入コストが高い。


 経験値残高を確認する。八百二十。


 《光刃・中級》の購入コスト:九百。


(あと少し足りない)


 今日中に稼げる。



 四層で経験値を稼ぎながら、樹はもう一つのことを考えていた。


 MPの管理だ。


 《光刃》はMPを消費する。今まで一層から三層では問題なかった。しかし四層でゴーストが増えると、消費量が増える。MPが切れたら《光刃》が使えなくなる。


(MPもステータスに関わる。INTを上げればMPの最大値も上がる)


 やはりINTへの投資が必要だ。ただし全部を一度に変えるのは危険だ。小さく試して、データを取る。


 STRから1ポイントだけ抜いて、INTに回す。


 体感が変わった。剣が少し軽くなった感覚。しかし《光刃》を発動したとき、光の密度が上がった気がした。


 ゴーストに《光刃》を当てる。


 二撃で仕留めた。


(STR-1、INT+1で一撃分短縮できた)


 データが確定した。



 夕方、経験値が九百を超えた。


 《光刃・中級》を購入した。


 効果が上がった。発動時の光量が増す。次のゴーストに当てる。


 一撃で仕留めた。


「……一撃ですか」


 花音が目を丸くした。


「《光刃》を中級にした。INTに少し振った」

「STRとAGIは?」

「STRから1ポイント削った。AGIは維持している」

「一ポイントでそこまで変わるんですね」


 花音は感心したように言った。


「変わらないように見えて、積み重なる。それが《自由配分》の本質だ」


 樹はそう言ってから、今日のデータをノートに書き込んだ。


 MP管理の基準ラインも確定した。一日の探索でMPが切れない消費ペースを守れば、四層を安全に回れる。


(次は試験だ)


 Dランク試験まで、あと二週間。



                           ――続く



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【作者コメント】

第12話です。お読みいただきありがとうございます。


「変わらないように見えて、積み重なる。それが《自由配分》の本質だ」——今回はっきり言語化できた気がします。一ポイントの調整がゴーストを一撃で仕留めるまでの差になる。地味だけど確実な積み上げが樹の強さです。次話は試験前日です。


                       日向 なつ

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