濃硫酸は脱水作用が凄い話

@isonosuke

プロローグ

 朝の6時。

 いつもの朝が始まる。

 まず伸びをして、歯を磨いて、健康状態のデータを自治体に送る。そして身支度を整えたら、バイト先へ向かう。今日は出前配達の仕事だ。

 俺は田中正一。いたって普通のフリーターだ。毎日いろんなバイトを掛け持ちして生活している。彼女?そんなものはいない。別に顔がいいわけでもないし、こんなフリーターと付き合いたいやつなんていない。これからもずっとこんなふうに定職に就かず、ふわふわした人生を生きていくのだろう。何か決定的な出来事が起これば俺の重い腰も動くのかもしれないが。

 それはさておき、今日の仕事を確認する。まずは高級住宅街にピザを届けて、ああ、その後はいつもの研究所にフルーツ味のゼリーを届けるのか。

 研究所というのは、国立生命創造・進化研究所のことである。あそこではよくゼリーの注文が入るのだ。

 とにかく、まずは高級住宅街のピザの注文を済ませねば。ピザかぁ、俺も食いたいなあ。


 朝の6時。

 時間になったので、ゲル保存装置の扉が開かれる。僕はそこから這い出て、まず最初に人間らしい形を作る。手は成形するのが苦手なので、手袋をつけてその形に這わせて作る。そして白衣を着て、いつもの監視員さんに挨拶したら研究を始める。

 僕は実験体番号0926、またの名をきゅにー。フルーツ味のゼリーとその他いろんな薬品でできたスライムだ。そして、この研究所、生命創造・進化研究所の研究員さんの管理下で研究をする研究員兼実験体だ。自分の体を切り取って実験材料にして使う。今日は濃硫酸でも混ぜてみようかな?お、煙を出して縮んでく。やっぱりスライムだから、脱水作用のある濃硫酸だとよく反応するんだなあ。

 ああ、すこし体を削りすぎた。身体がちょっとだけ小さくなっちゃったじゃないか。いつものフルーツゼリーの配給、まだかなあ。

 ……配給をとっとともらって、計画を達成しないと。

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