きれいな流れ星
朱下 宣
第1話 きれいな流れ星
焚火の火をさんにんで眺めていた。
どうして、夏のこんな暑い日に、おとなたちは焚き火なんてするのだろう。
ケンタロウ君が言った。
「夏ってさ、お盆があるじゃない? あれって、ご先祖様がこっちに返ってくるだろ」
ケンタロウ君はいつも元気だな、そんなことを私は思った。
「そうだね。お盆はみんなやすんで、墓参りをするんだよね」
佳代ちゃんが言った。
「だからさ、ご先祖様も心配しているわけだろ。だって、わざわざ、あの世から返ってくるんだからさ」
「うん、そうだね」
また、佳代ちゃんが言った。
「そしたらさ、折角なんだから、立派になった姿を見せれたら、毎年、退屈しなくてよいだろ?」
なんとなく、私は揺れる炎を眺めていた。パチパチと薪のはじけるおとがしていた。
ながい、ながい、じかんをかけて成長した木が、一瞬で灰になっていくのは、なんでだろうと思っていた。
実は両想いのふたりのはなし声が遠ざかっていった。
炎は燃え盛り、さいごのさいごに、火の精霊となって、わたしたち、さんにんを勇気づけてくれているのかな、そんなことを思った。
「おい、花絵。聞いているのか?」
ケンタロウ君がそう言って、私は我にかえった。
「うちは、親が片親だからさ」
こんな言い方をしたら、いつも、ふたりは同情してくれる。
「花絵。元気をだせって、いつも、お前、うじうじしているだろ」
佳代ちゃんが、やさしい表情でこっちを向いてた。
「お父さんがいないと、やっぱり心細い?」
うん。そう答えてから、また、黙りこくった。
「おとなは、やっぱり頼りにならないよな」
そんなことを言うと、また激しく叱られるよ。佳代ちゃんがそう言うと、また、二人で親密に話しはじめた。
わたしたちは、どうして思うのだろう。どうして、何かを夢中になるのだろう。
夜空といったいになって、そのまま、巨大なブラックホールに吸い込まれそうに思った。
お父さん、いつか会いにきてくれないかな。私が立派になれたら、お父さんは会いにきてくれるかな。
流れ星がきれいな軌道だった。
お母さんも、まいにち、まいにち、はたらいてばっかりで忙しそう。ずっと、私はひとりぼっち。誰かとかいわをしたいなって思ってしまう。
あまりにも、さみしくなると、ショッピングモールへいつもいく。そこの椅子にちょこんと座り、だれか私を拾ってください、そんなじかんを過ごしている。
こんな人がお父さんだったらな。忙しそうにするおとな達をながめながら、そんなことを思ってしまう。
このまま、誰か拾ってくれないかな。もっと、他の親に生まれてくればよかったな。
どうして、こんなにも私は不幸なんだろう。不幸だなって思うだけで、もう、これ悪いことを考えてないかな。
このキャンプはケンタロウ君に誘ってもらった。ケンタロウ君の家は、お父さんさんも、お母さんも、私に優しくしてくれる。
よくあることだけど、佳代ちゃんのお父さん、お母さんは、これみよがしに、どうして花絵ちゃんのお母さんは、ここにいないの? そんな返答に困ることを、平気できいてくる。なんか痛くてしょうがない。
気がつくと、焚火のそばでマシュマロを焼いている。お父さんがそばにいて、ふたりで楽しそうに会話している。やっぱりケンタロウ君の家が、うらやましいな。ふつうの家庭がそうなのかな。
なんか、わたしがいるだけで、片親だってことをアピールしているみたい。ただ、いるだけで気まずくなる。
このまま、私はおとなになるにつれて、なにも感じなくなるのかな。
さみしい、そんなきもちに蓋をしても、もっと、さみしくなると思う。
いつか、お父さんに会いたい。
流れ星が、またきれいな軌道を描いていた。
きれいな流れ星 朱下 宣 @literature_or_not
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