『疾風勁草 疾風に勁草を知るの略で、強い風に吹かれて初めて強い草であることが分かること』(本文より引用)
一目見て、好きな言葉だなと思いました。
私よりおそらくははるかに先にこの言葉を手にし、あまつさえ物語として昇華されている作者様が、ちょっと羨ましくなるくらいに。
一枚のレコードと、一人の少女、そして少年の夢。
懐古の香り。ノスタルジックで素敵なのですが、将来を間近に控えたターニングポイントを前に揺れる少女と少年という、いつの時代にも通ずるテーマが軸となり、物語は進んでいきます。
本作で展開されるのは、時代に生きる人々、そして同時に、時代に翻弄された、あるいは、殉じた思いが併せて描かれるという、多層的な人間ドラマ。
まだ物語は途中なのですが、時代の中で、それはともすれば、社会の中でということになりますが、大人になっていくことの難しさと葛藤。
それを本作は、あるときは儚く、あるときは明瞭に描き出しています。
まだ、今以上に、個人が“その人”であることが、難しかったであろう時代。
自分とは何か、自分はどうしたいのか。手にしたい。時代がそれを、許さないとしても。
強い風の中で今は佇む彼女らの先を、見届けたく思います。