第18話 隠語

「なぁ、でさぁ、一体どうしたんだよ急に途中で黙り込んでさ」


 黙々と何かを調べ上げている柳田に、佐々木はダル絡みをしている。


「全く、やかましい方ですね本当に。『柴』が隠語である可能性が濃くなったんですよ」

「はい? ちゃんと説明してくれよぉ。一応バディなんだからよぉ」

「きちんと立証するために少し調べ上げますから。しばらく静かに待っておいて下さい」


 柳田は落ち着きのない佐々木を制すると、しばらくの間情報収集に没頭した。


「なぁ、まだかよぉ。ニコチン行っちゃって良い?」

「駄目です」

「えぇ……」


 柳田はやれやれという表情でまたもや佐々木を制すると、調べ上げていたSNS画像を佐々木の方へ向けた。そして、『わんにゃん論争』と書かれたタグを指差した。


「わんにゃん? 何だよこれ」

「『わん』は犬、『にゃん』は猫を表しているんです。先程佐々木さんが目をハートにして夢中になっていた方のSNSにも、『わん』やら『にゃん』やら書いていました」

「ふ〜〜ん。で?」


 目の前のバディの察しの悪さに、柳田は小さくため息をついた。そして、やれやれと言わんばかりの表情でスマホの画像を拡大すると、詳しい説明を繰り広げた。


「犬と言えば犬歯が特徴的ということで、つまり『わん系』は『八重歯』のある子のことを示しているようです。先程、佐々木さんが夢中になっていた子のSNSを覗いてみて下さい」


 佐々木は言われた通り、履歴からそのSNSを探り出し目を通した。


「あ、『わん系女子』って書いてる。しかも、この子八重歯があるぜ。あ、こっちの子は『にゃん系』って書いてる。なるほど、爪ってことか」


 にゃん系は皆、個性的でかなり長さのあるネイルを主張した内容を投稿している。


「なるほどなぁ、やべぇ、俺最近のSNSに全然ついていけてねぇわ」

「まぁ、この年頃の方々にとったら、佐々木さんはもうオジサンですからね。ついて行けなくても致し方ありませんよ」


 柳田の容赦ない一言に、佐々木はお決まりのように眉を八の字にさせた。


「さて、佐々木さん、この後僕たちは何をすべきでしょうか」

「へ?」


 柳田からの唐突な質問に、佐々木は相変わらず締まりのない顔でポカンとしている。


「2、3分猶予を与えましょう」

「う……」


 佐々木は青い顔をしながら、足りない頭を必死で回転させようとしているのか、腕組みをしたままくるくると回り出した。


「何をしてらっしゃるんです……」

「何か、こうでもすりゃ頭も回転するかなって、へへ」

「……」


 この回答には、流石の柳田も言葉が出なかったようだ。


「じ、時間切れです。減点ですね……」

「な、何だよその顔はぁ」

「……とりあえず説明に入ります。よく聞いておいて下さい」


 柳田は、殺害された金井の残したダイイングメッセージの『柴』は、佐々木が最初に見立てた柴犬からきている可能性が高いと言い出した。


「でも、誰も飼ってなかったんだろ???」

「はい。柴犬と言ってもおそらく隠語ですからね。佐々木さん、柴犬は犬ですよね。つまり、『わん系』と同じでチャームポイントの『八重歯』を意味しているのではないかと」

「でもよぉ、それは単なる仮説だろ?」

「えぇ、その通りです。その仮説を立証するために、再度兵頭さんに協力依頼をかけます」

「なら、俺が行ってくるよ。兵頭さん、色々と手伝ってくれてるし、珈琲でも淹れてさ」

「では、細かな内容を紙にまとめますので、そちらを兵頭さんに渡して下さい。あと、これを」


 柳田はそう言うと、手に入れたサブレを佐々木に手渡した。


「良いのか?」

「はい。いくつかゲットしましたので」

「おぅ、じゃあ行ってくるわ」


 佐々木はサブレと珈琲を手にすると、兵頭の元へと向かった。

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