誰かを忘れたくない、という気持ちは、こんなにも人を追い詰めるのか。読み終えてしばらく、その問いが頭から離れなかった。
透真はただ親切だ。誰にでも、同じように、静かに。見返りを求めず、覚えていてほしいとも思わない。その優しさが、受け取った少女たちにとっては、じわじわと効いてくる毒になる。特別ではない、とわかった瞬間の、胸がすうっと冷える感覚。この小説はそういう細かい場所を、ちゃんと知っている。
三人がそれぞれ、紙に書き、写真に写し、声に録る。それでも朝が来るたびに忘れてしまう。だったら次は、という切迫感に論理があって、読者はその論理についていってしまう。気づいたときには、少女たちは、どこへむかっているのだろう。
思いあうことと、壊しあうことは、おなじなのだろうか。