歓楽街の片隅、夕方から深夜だけ開く『夜の花屋』。ママへの花、拒まれても届く花、見栄を張り合うスタンド花――最初、主人公の咲には、その全部が“よくわからない”ものに見えています。
咲は、真っ直ぐに育った子です。「もらったら、ちゃんと返さなきゃ」。その律儀さが、実は少しずつ、自分の首を絞めている。
この物語は、花を「贈る」話であると同時に、それ以上に、「受け取る」話です。拒まれても贈りたい人がいて、うまく受け取れずに苦しむ人がいる。咲は、夜の街を行き交う花を見ながら、少しずつ、受け取り方を――人の想いとの距離の取り方を、学んでいきます。
夜の街を、見下ろしも、美化もしない。ただ、そこで交わされる想いを、丁寧に掬い上げていく。読み終わる頃には、あんなに苦手だった街の灯りが、優しく見えてくるはずです。
ただ、読み終えたあと――きっと、誰かに、あるいは自分に、花を贈りたくなる。そんな物語でした。