第15話

第15話

「雨宿り」



雨だった。


激しい雨。


こんな日は、

客足が極端になる。


誰も来ないか。


訳ありしか来ないか。


今日は後者だった。


カラン。


扉が開く。


入ってきた男を見た瞬間、

リアの顔が変わった。


「……隊長」


店内が静まる。


男は五十前後。


白髪混じり。


片目に傷。


鎧は古いが、

空気だけで強いと分かる。


王国騎士団の人間だった。


男はリアを見る。


それから、

ゆっくり店内を見回した。


ヴェラ。


ガロン。


レオ。


神父。


最後にユウ。


男は少し笑った。


「なるほど。

噂通りだ」


リアが立ち上がる。


「……何しに来たんですか」


「酒を飲みに来た」


「隊長」


「勤務外だ」


そう言って、

男は普通にカウンターへ座った。


ユウが聞く。


「何飲む」


「強いの」


リアが眉をひそめる。


「やめた方が」


「お前に言われる歳じゃない」


ガロンが小さく吹き出す。


空気は重い。


ヴェラも警戒していた。


王国騎士団。


しかもリアの元上官。


今までで一番、

危険な客かもしれない。


ユウは酒を置く。


男は一口飲んで、

静かに息を吐いた。


「……悪くない」


それから、

ヴェラを見る。


ヴェラも視線を返す。


数秒。


男は意外なことを言った。


「リアが世話になってるらしいな」


ヴェラは少し止まる。


「……別に」


「そうか」


男はそれ以上言わなかった。


リアが険しい顔で聞く。


「隊長、

何考えてるんですか」


男は酒を揺らす。


「何がだ」


「魔族ですよ」


男は少し笑った。


「お前、

昔より視野狭くなったな」


店内が静まる。


リアの表情が変わる。


男は静かに続けた。


「戦場じゃ敵だ。

だが、

戦場の外でまで敵やってたら、

人間いつ休むんだ」


レコードの音だけが流れる。


ヴェラは少し驚いた顔をしていた。


リアは黙る。


男は酒を飲み干す。


それから、

ユウを見る。


「面倒な店だな」


ユウは煙草をくわえたまま返す。


「褒め言葉二回目や」


男は少し笑った。


雨音が強くなる。


その夜、

NO SIDEには珍しく、

少しだけ穏やかな空気が流れていた。

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