ポーカーフェイスと缶コーヒー
縞間かおる
<これで全部>
「フォア・カードにはならないけど……私達はいつもフルハウス
“役3枚”が私だったり、カレだったり。その時々で違うけれど……」
「今はどうなんですか?」
せっかく綾さんとお茶できたのに何でこんな話になってしまうのか??
「横恋慕のムリ押し」のオレのどうしようもない嫉妬心が……聞かなくてもいい事を口に出させてしまう。
「今のカレのメールがちょっと冷たいから……私が3枚かな?」
「それ、不公平だと思いません?」
「えっ?! どうして?」
「冷たくされたんなら怒ってもいいじゃないですか?」
「ふふ、そうね。 そうなれるのなら……いいんだけど」
「なれますよ!」
綾さんはクルクルと回していたティースプーンをソーサーに置いた。
「どうやって?」
「綾さんの3枚揃った手札の1枚とボクの出すハートの手札1枚とを交換してくれればいいんです。そしたら綾さん側、カレシ側の2枚ずつのツウ・ペアになります」
「うふふふ 確かに! でもね! コウくん! そんなルールはポーカーにはないのよ。だからダ・メ・」
軽くあしらわれたオレはムキになる。
「そんな事言うなら! もともとポーカーの話じゃない!」
「そうね。でもゲームの話ではあるわ。そして大人のゲームに子供は首を突っ込まない物よ」
「何が『大人のゲーム』だよ! 馬鹿馬鹿しい!!」
「ほらっ! そうやってすぐムキになるでしょ? 子供にはゲームは無理ね」
その一言で完全に頭に血が上ったオレはスマホをタップし、綾さんに“切り札”を見せる。
「この写真見て! 綾さんのカレシが知らない女の腰に手を回している!!」
綾さんは写真を一瞥し、軽くため息をついてオレのコーヒーカップにドボドボと砂糖を放り込みミルクピッチャーを挿し入れた。
「切り札の使い方も知らないキミにはブラックは似合わないよ」
そう!
どうせオレはハートのフラッシュ。元よりフルハウスには適わない。
よしんば手札を1枚交換できたとしても……綾さんはツウ・ペアでオレはブタだ。
ポーカーフェイスで静かに紅茶を嗜む綾さんの前で
オレは缶コーヒーの様に甘くなったカップの中身を
苦い顔で啜るしかなかった。
おしまい
ポーカーフェイスと缶コーヒー 縞間かおる @kurosirokaede
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