夢にブレーキは、要らない
燈耶 真
第1話 敗北
サーキットの激しい照り返しが、ジリジリと肌を焼く。
長時間の耐久レースも終盤に差し掛かっていた。
目の前をコンマ数秒で通り過ぎていく甲高いバイクのエンジン音が、
落ち着かない様子で、1周のタイムをストップウォッチで測る後輩を他所に、俺はタイヤ交換と給油の準備を始めた。このまま行けば上位入賞は安牌だ。
「……まだ、速くないですか?」
「いや、路面の温度が高すぎる。ブレーキもちょっと回数多い。」
「了解っす、
ピットインのサインボードを掲出させて、次の周回のあと匠海がピットインしてくる。
俺達3人のピットクルーは洗練された動きで、タイヤ交換と給油を終わらせた。
匠海が勢いよく、コースインしていく。
これで、レースの最後まで走り切れる。
俺達の整備やピット作業は完璧だし、マシンの調子もいい。
固唾を飲んで、ゴールを待つ。
長時間の耐久レース、3人のライダーが代わる代わる走り抜いて、200周も超えて、あと……少し。
ピットの中で結果を見守る者たちは、残り時間と、周数、タイムを見て勝利を確信していた。
このままなら、優勝出来る――
「……あぁ、やっぱり。」
俺は一人、モニターを見ながら、最終コーナーで2位と競った匠海のブレーキに、小さく零した。
「あぁーーーー!!」
「何でそこで競り負けた?!」
「マジか……どうした匠海……。」
ピットの中は阿鼻驚嘆。
世界耐久レースで見えた優勝に、手が届きかけた途端に空を切る。
だが、俺だけは……
このピットの中でこの結末を、当然のものとして捉えていた。
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