第12話 再演すべし(2)
すでに神聖日本王国と交戦状態にあったムーは、地底の日本同士で始まった軍事的な対立に歓喜する。
この機に乗じて、ムー軍は神聖日本王国に攻勢をかける。
<ドレイク>
「さて、地底の日本同士が揉めている今がチャンスに違いない。日本が内輪でもめているこの隙に、神聖日本王国に対して攻勢をかけるってわけだ」
<リーダー>
「漁夫の利を狙う作戦……。わかりやすい計画だね」
<ドレイク>
「そう、難しいことじゃない。ってわけで、ジャレスにも戦力を提供してもらうぜ。もともと戦うつもりだったんだからいいだろ?」
<リーダー>
「そうだね。できる範囲で、できることをやらせてもらうよ」
ムー軍は遊撃部隊としてジャレスを利用しながら、神聖日本王国の要塞を攻略していく。
ムー軍とともに出撃を重ねるジャレス。
とりま、坂下、宮川、チャフカ、カイル、なだらたちは経験を積み重ねながら、パイロットとしての連帯感を強める。
特に主力として活躍するとりまは、着実にジャレスのエースとして成長していく。
一方、戦場に出撃しない中上もブリッジで通信やレーダーの補助、艦内の雑用などを積極的に行ってジャレスの中に居場所を作っていく。
神聖日本王国と秘密裏に休戦していた大帝、瞬く間に勢力を広げるムーを警戒。
会議室に集まる大帝の軍人たち。
目を閉じて、心の中で語る八島。
<八島>
「大日本地底帝国の皇帝である
ゆっくりと目を開き、まっすぐに皇帝を見て口を開く八島。
<八島>
「陛下、ぜひお言葉を」
皇帝は一呼吸を置いて答える。
<皇帝>
「かの奇襲、再演すべし」
ぼそりとつぶやかれた皇帝の一言に動揺が走る会議室。
<大帝の軍人>
「恐れ多くも伺います。かの奇襲とは?」
<皇帝>
「リバイバル・パールハーバー」
<大帝の軍人>
「まさか、何十年も前に地上であったという真珠湾の再演ですか!」
<八島>
「さすが皇帝陛下。たかが一言で、すべてを決定付けてくれる」
開戦を決めた大帝はムー共和国に対して宣戦布告を行うと同時に、霊戦改の編隊でムー軍の前線基地であるウェスター要塞を奇襲。
その後、報復を主張するムー大統領の決定によって、正式に戦争状態となる。
<イージー・エッグ>
「まったき平和。まったき異常なし。日本海溝で大帝と戦闘があったなど、まるで嘘のような静けさよな」
<ムーの兵士>
「このウェスター要塞にも、早く出動の要請が出ませんかね?」
<イージー・エッグ>
「どんなに願ったとて命令が出るわけもない。ここが戦場になることなど、この先数百年はないだろうさ。ムー共和国は攻める国であって、攻められる国ではないのだからな」
笑うイージー・エッグのもとへ、慌てた様子の部下が駆け込んでくる。
<ムーの兵士>
「司令! 監視塔から、大帝の方角から敵が来ているとの報告が!」
<イージー・エッグ>
「敵襲だと? それも大帝? どうせいつもの誤報に決まっているだろう。直ちに注意しに戻れ。ここ最近、特に訓練中の事故が目立つぞ」
<ムーの兵士>
「は、了解しました!」
かしこまった様子で部屋を出て行く部下。それを見送って苦笑するイージー・エッグ。
<イージー・エッグ>
「全く。私は部下と機会に恵まれていないな……」
だが、数分後、爆撃を受けて基地が炎上する。響き渡る警報。
<イージー・エッグ>
「何事だ!」
立ち上がり、うろたえるイージー・エッグ。
そこへ、息を切らせて部屋に駆けこんできた部下が叫ぶ。
<ムーの兵士>
「て、敵襲です! おそらく大帝!」
<イージー・エッグ>
「敵襲だと! それも大帝! 信じられん! 監視は何をしていた!」
<ムーの兵士>
「この要塞のレーダーには映らぬステルス機だったのです! かろうじて偵察部隊が目視したという情報も、なぜかうまく伝わらなかったらしく!」
<イージー・エッグ>
「言い訳はいい! あれこれと御託を並べて敵が帰ってくれるものか! 出迎えるなら弾丸と爆撃をくれてやれ! 急いで迎撃をしろ!」
<ムーの兵士>
「ですが、すぐに使える機体は数えるほどもありません! パイロットも出撃には時間がかかります! なにしろ準備がおろそかでしたので……!」
<イージー・エッグ>
「おろそかでも出せ! 準備運動が必要なやつは乗りながらやらせろ!」
そして、ろくに反撃できず陥落するウェスター要塞。
攻撃を決めた大帝の参謀本部にも報告が入る。
<八島>
「皇帝陛下、ご報告があります」
<皇帝>
「聞こう」
<八島>
「我々が攻め入ったムーのウェスター要塞ですが、素晴らしいことに、こちらの損害はなかったようです。奇襲は見事に成功いたしました」
<皇帝>
「……感涙の極み」
<八島>
「は! ありがとうございます」
地底の戦争が拡大する中、ジャレスの日常風景。
久しぶりの休日、なにやら機嫌がいい坂下は無自覚に鼻歌を楽しむ。
<坂下>
「んふふ~」
<宮川>
「どうしたんだよ、坂下。地底情勢が不安定だって言うのに、今日はいつになくハッピーそうだな。さっきから口元が緩んでいるぜ。なんかいいことあったのか?」
<坂下>
「いや、いいことなんて特に何も……。ただ、とりまちゃん、僕のプレゼントを気に入ってくれたんだなぁって」
<宮川>
「ああ、あの笛か? 確かにずっと首に下げているみたいだな。戦闘に出ている時、たまに通信でもピィピィうるさいぞ。気に入って吹いてやがる」
<坂下>
「はい、可愛いですよね」
<宮川>
「可愛いかどうかは聞いてねえ」
<坂下>
「あ、はい。いちいち聞かなくたってわかりますもんね。ふう、思い切ってプレゼントしてよかった……」
胸をなでおろす坂下。しかし、ポケットに手を当てて難しい顔をする。
<坂下>
「けど、こっちは渡せてないんだよな。タイミングを失っちゃったっていうか……」
黙り込んでしまった坂下に宮川が問いかける。
<宮川>
「なあ、お前、とりまのこと好きなのか?」
<坂下>
「げふん、げふん! ごふぉ、ごふぉ!」
<宮川>
「せき込むほどかよ。お前、顔が真っ赤になってるぜ」
一方、とりまはネックレスにした笛を手で触りつつ、愛おしそうに眺める。
<中上>
「とりまちゃん、さっきから何しているの?」
<とりま>
「……うん」
とりま、首から提げた笛を嬉しそうに掲げてみせる。
<中上>
「なるほど、それをもらったことが嬉しくてしょうがないのね?」
<とりま>
「うん」
<中上>
「ふふん、坂下からのプレゼントだったからでしょう?」
<とりま>
「…………!」
とりま、思わず赤面して顔をそらす。
<中上>
「また顔が赤くなってる。素直で可愛いなぁ……けど、そうね。私もちょっとはそうあるべきかしら?」
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