第3話 初めての戦闘とカード化

レンは召喚陣の上に立ち、息を整えた。


目の前に現れたゴブリンは、いつも戦っていた弱い雑魚ではない。

瞳が赤く、身体は黒い靄に包まれている。


そして――なぜか、レンに敵意を向けていなかった。


「……本当に、召喚できたのか」


ゴブリンは短剣を握ったまま、静かに待機している。

まるで命令を待っているかのように。


その時、通路の奥から三体のゴブリンが襲いかかってきた。


「ギィィ!」


先頭のゴブリンが飛びかかる。


「止めろ!」


レンが叫ぶと、召喚ゴブリンが動いた。

地面を蹴り、一瞬で敵の懐へ飛び込む。短剣が喉元を貫く。


一体撃破。


だが残り二体は止まらない。左右から同時に迫る。


「くっ……!」


レンは短剣を構えた。


――その瞬間、身体が軽い。


(……動ける?)


昨日までとは違う。

視界が鮮明で、敵の動きが読める。


横からの攻撃を避けつつ、反撃。

もう一体が棍棒を振り下ろすが、半歩下がって回避。


その隙に召喚ゴブリンが背後から飛びかかった。


「ギャアアッ!」


数秒で三体のゴブリンは倒れた。


「はぁ……はぁ……」


レンは自分の手を見つめる。


(勝てた……さっきまで一体に苦戦してたのに)


理由は一つ。

腰に浮かぶ黒い召喚書。


ページには新たな表示があった。


《ゴブリン 1/3》


「1……3?」


倒れたゴブリンのうち、一体だけが黒い光に包まれ、カードへ変化する。


《異界カード【ゴブリン】を取得しました》


「カード化……?」


手にしたカードは同じゴブリンだが、わずかに絵柄が違う。


《短剣ゴブリン》

《敏捷微上昇》


さらに召喚書が光る。


《カード保有数:2/3》

《容量上限あり》


「無限じゃないのか……」


その瞬間、新たな表示が浮かぶ。


《同系統カード収集で効果上昇》

《ゴブリン系統:2枚》


レンの鼓動が速くなる。


(集めるほど強くなる……?)


試しにもう一枚のカードへ触れると、黒い魔法陣が輝き、別個体のゴブリンが現れた。

静かに待機している。


「二体……」


その瞬間、頭に鋭い痛みが走った。


「っ……!」


視界が揺れる。


《現在魔力不足》

《同時召喚数:2/1》


「制限があるのか……!」


レンはすぐに一体を解除した。

黒い粒子になって消えていく。


すると頭痛も消えた。


(今の俺じゃ、一体が限界)


だが同時に確信する。


(これ……強くなる)


そして――。


「この能力……絶対、秘密にした方がいい」


討伐した魔物を奪い、使役し、自身まで強化する。

普通の召喚士とは違う。危険視されてもおかしくない。


レンは召喚書を握り締めた。


ドォン――!!


ダンジョン全体が揺れる。


「!?」


警報が鳴り響く。


『訓練生は直ちに退避! 想定外のゲート反応!』


「何が……?」


通路の奥から、異様な気配が迫ってくる。


赤黒い巨体が闇から姿を現した。


二メートルを超える体躯。

歪んだ角。

燃える瞳。


《D級魔物 レッドオーガ》


通常、この区域に現れるはずのない魔物。


そして――

その視線は、迷うことなくレンへ向けられていた。

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