第3話 キモ脚フェチ砲、発射

乾杯から三分後、あずきが静かに口を開いた。笑顔だった。完璧な笑顔だった。


「光明寺くんって、みなみの知り合いなんですよね?」


「あ、はい、まあ、以前一度」


「みなみからよく聞いてます」


「……どんな感じで聞いてますか」


あずきはにっこりと笑って、少し首を傾けた。


「うーん……面白い感じかな」


それだけだった。「面白い」が何を意味するのか、どの方向の「面白い」なのか、一切の補足がなかった。あずきはジンジャーエールを一口飲んだ。


【光明寺豪・内心/刑事モード・レッドアラート】

被弾。開始三分。被弾した。しかし「面白い」とは何だ。面白い、には複数の方向がある。好意的な面白さか。そうでない面白さか。判断材料が、足りない。これは、意図的な情報の不開示だ。あずきは、確信犯だ。

その時、まゆがメニューを手に取りながら首を傾げた。


「ねえねえ、スピードスターって何? 足速いの? リレーの選手?」


あずきが「違う違う」と笑った。


れいかがスマホから目を上げて「そっちかー」と言った。「そっちかー」の温度が、深かった。何かを知っている者の温度だった。


豪は「えーっと」と言いかけて、止まった。


【光明寺豪・内心/司令官モード緊急移行】

説明、するか。しないか。するとして、何を。しないとして、沈黙はどう解釈されるか。まゆの質問は純粋だ。しかしれいかの「そっちかー」が引っかかる。「そっち」とは何だ。別の「こっち」が存在するということか。……情報が、多すぎる。いや、少なすぎる。

(どの司令官かは今回も誰も知らない)


「まあ、その、色々と早いっていう、ニュアンスで……」


「へえ〜! すごいね!」とまゆが言った。悪意がゼロだった。透き通っていた。


「色々なんだぁ」とあずきが静かに言った。笑顔のまま。


豪のライフポイントが、音もなく削れた。


※キモ脚フェチ砲、命中。ただし豪は被弾した事実のみ把握しており、弾の中身は最後まで知らされない。それが一番怖い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る