女の子の曲線美を語っていたら、うしろの席の美少女に見つかりました

虹色アルパカ

第1部

プロローグ

第1話 「……絆創膏って、マジか」

 家族がみんな自分の部屋に引き上げた、夜更け前のこと。自室にこもった俺は、日課の作業通話をしていた。


 イヤホンから聞こえてくる、聞き慣れた声。この声を聞きながら動画の続きを作るのが、ここ最近の一番の楽しみだ。


「あ、そうだ。この間話してた演出の、参考になる動画を作ってみたんだよね。お手洗いに行く間に流しておくから、確認してもらえるかな?」

「マジっすか! お願いします!」


 共有された画面上で、動画が再生される。

 真っ黒だった画像が映像に切り替わった途端──俺は固まった。


 予想外の内容だった。実写の動画だ。淡い色の壁紙の前に、小柄な女の子が立っている。顔の上半分は見切れている。けれど、その小柄なシルエットに、妙な既視感があった。


「嘘だろ、これって──」


 なにより目を引くのは、女の子の服装だった。

 上下セパレートの水着のような服。下は短めのスカートで、上はフリルみたいなひらひらの布が、胸元をギリギリ隠しているばかり。お腹はかなり大胆に露出している。


 この動画って、俺が見て大丈夫なやつ? たぶん違うよな。


 慌てて動画を閉じようとした指が、マウスの上で固まる。いや、見ちゃいけないってわかってはいるんだけど……。

 罪悪感にさいなまれつつも、画面から目が離せなかった。それほどまでに、動画の女の子は魅力的に見えた。


 聞き慣れた曲が流れ始めて、女の子はそれに合わせて踊り始めた。いかにも踊り慣れていそうな、スムーズな動き。素人目にも上手いと思う。

 しかも、全体的にひらひらとした軽そうな衣装は、女の子が動くごとに激しく舞い上がり、俺の理性を容赦なく揺さぶってくる。


 知らず、ドキドキと高鳴る胸。体の奥が、変に熱くなる。


 ……ちょっと待てよ?


 ふと、画面に大きな違和感を覚える。女の子の上半身。ひらひらの布が頼りなく覆い隠しているふくらみの、南半球に相当する場所に、本来なら見えないはずの肌色が見えていた。


 つまり、この肌色の正体って──

 ────‼


 脳裏に浮かんだ悩殺のうさつワードを、俺は必死で否定する。

 いや、ダメだダメだ! 女の子のそんな姿を勝手に覗いて、変な想像をするなんて‼


 気合いで目を閉じて、どうにか画面から視線を引きはがす。


 ……あれ、でも目を閉じたままじゃ、共有画面のバツ印も押せないな。


 どうしようか困っているうちに、曲はCメロに入っていた。あと数フレーズで、ラスサビ前の大きな盛り上がりが来る。


 マズいマズい! この曲の振りつけって確か、盛り上がるところで大ジャンプするんだよ! この格好でそんな動きをしたら──‼


 焦りで判断が鈍っていた。覚悟を決めて薄目を開けた瞬間、まぶしい肌色が視界に飛び込んできて、慌てて右上のバツ印を探す。右手でマウスを握ると──



『接続が切断されました』



 画面共有と通話が同時に切れる。少し間を空けて、監督から次々にメッセージが届いた。


『みちがえた』

『まちがいでふ』

『見ないで』


 監督、すごく動揺してる……って、当然か。たぶん、とっさにPCの電源ごと落としたってことだよな、これ?


 何度か深呼吸して、目に焼き付いた光景を忘れようと努める。


 ……違うんだ、不可抗力だったんだよ! 動画を止めようとした一瞬で、あんな──!

 ああ、頭がどうにかなりそうだ。せめてこれだけ、今のうちに吐き出させてくれ。




「……絆創膏ばんそうこうって、マジか」




 ──これは、健全な男子高校生である俺、こと比良坂ひらさか恒一こういちが、とある一人の天才クリエーターと出会い、自分をほんの少しだけ好きになる物語だ。






────────


性癖バレから始まる青春ラブコメ「うしみつ」連載開始です!

初日は4話投稿。そのあと、日曜~木曜の週5日、朝7時過ぎの投稿を予定しています。


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