第3話 急所

 

 ■見えない急所を探して

 本に、こんな話が載っていた。


 止まった機械を直すために、職人がハンマーで一度だけ「カーン」と叩いた。

 すると機械は見事に動き、問題は解決した。

 請求書には「100ドル」と書かれていた。


 お客は言った。

 「たった一回叩いただけで、100ドルは高いんじゃないですか」


 職人は静かに答えた。

 「ハンマーで叩くのは1ドル。

 “どこを叩けばいいか”を見抜くのが99ドルです」

 この話を読んだとき、私は妙に胸がざわついた。


 豆に必ず黒点があるように、どんなものにも“急所”がある。

 そこを見抜ける者だけが、結果を出せる。

 それは、確かにその通りだ。


 だが私は、どれだけ学んでも、その一点が見えない。

 努力の方向が合っているのかどうかさえ分からない。

 何度叩いても動かない機械の前で、ただ立ち尽くしているような気がする。


 でも、最近思うのだ。

 “急所”は、最初から見えるものではないのかもしれない。

 職人だって、最初から99ドルの場所を知っていたわけではない。

 何度も失敗し、何度も叩き、その積み重ねの先に、ようやく「ここだ」という一点が、見えたのだろう。


 私がまだ見付けられないのは、才能がないからではない。

 ただ単に、叩く回数が足りないだけなのかもしれない。

 そう思うと、今日の自分の不器用さ、青さんの不器用さが、少しだけ許せる気がする。


 しかし、私がこれだけのことを続けてきても、誰も気づかず、当然、褒められることもなかった。

 私なりに責任感を持ってやってきた。

 何人か手を尽くして、良くしたのに、結果を出したのに、その成果はすべて支援員に、吸い取られたように感じる。


 私は、まだ、何も受け取っていない。

 私に差し出されるのは、「無能という烙印」や、「そんなことをするな」という非難ばかりだった。

 私は、そんな物を「受け取る」ことは出来ない……。


 それでも周りの人は言う。

「それが世の中だ」と。


 ――ホントだろうか。


 精神障碍者だと思って、舐めてんじゃねえのか?

 そんな声が、胸の奥でひっそりと泡立つ。


 だが、その声に飲まれず、私は次の段階へ踏み込んでいく。

 青さんを育てることは、実は私自身の戦いでもある。


 過去の自分を救い、未来の誰かを救う戦いだ。

 だから、私はお願いしたい。

 青さんを、私に貸してください。          



  まとめ


 支援の技術は、学べば身につく。

 練習すれば上達する。

 経験を積めば深まる。


 しかし——

 支援者の心が正しくなければ、どれほど高度な技術も、彼らには通用しなくなる。

 だから、技術を学びながら、心を高める事も、続けて行く事が大切です。

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